外構工事(エクステリア工事)を行うことによって、殺風景な庭を見栄えのある外観にできます。
一風変わった外観の庭を手に入れたい場合、土留め(土が崩れるのを防ぐ壁)や塀に石積みを採用すると良いです。
洋風外構が流行っている中で、石積みを採用する方が少ないからです。
ただし、石積みは和庭に限らず、デザイン次第で他にはない洋風の庭を演出することも可能です。
また、簡単な石積みであれば、外構工事(エクステリア工事)の規模次第で擁壁(ようへき:コンクリートの壁)と同じくらいの値段で施工できます。
大規模な工事になると石積みの方が安価になることもあるので、工事内容の候補に入れておくことをお勧めします。
ただ、素人の方からすると「石積みって安全なの?」と疑問を抱く方は多いです。
石が積み上げられているだけなので、崩れやすそうに見えるからです。
しかし、石積みや石垣は全世界で施工されている技術です。
実際に、お城を支えている石積みやピラミッドは今でも当時のままの形を保っています。
一般家庭で作られるコンクリートを使用した構造物の耐久年数は、30年程度しかありません。
また、高強度のものを使用しても100年程度が限界といわれています。
そのため、年月が経つと黒ずんで見栄えが悪くなる上に、表面からボロボロと崩れ落ちていきます。
一方、天然石を積み上げる石積みであれば、年月の経過と共に風情豊かな庭に変化していくという楽しみがあります。
ただし、石積みは職人の手で一つ一つ積み上げていくものなので、きちんと施工しなければ危険です。
そこでこのページでは、石積みの基礎知識を紹介します。
石積みの工法を学び、見栄えのある庭造りの一つとして役立ててください。
目次
1.練積みと空積みの違い
石積みの施工方法には、「練積み(ねりづみ)」と「空積み(からづみ)」の二種類が存在します。
練済みとは、目地(石と石のつなぎ目)にモルタル(砂とセメントを水で混ぜたもの)を使用して石を積み上げる工法のことです。
また、石積みの裏にコンクリートや砕石を入れて強度を出しながら積み上げていきます。
このことを裏込めといいます。安定度が高いため、5m程度まで積み上げることが可能です。
ただし、雨水の浸透などによって土圧(土が崩れようとする圧力)が大きくなったときへの対策を行うため、圧力を緩和するための水抜き穴を設ける必要があります。
一方、空積みとは、目地にモルタルを入れたり、裏込めをしたりせずに積み上げていく工法のことです。
要は、石のみを積み上げていく「石積み」のことです。
練積みに比べると強度が劣るため、2m以上積むことは建築基準法で禁止されています。
※ここでいう「裏込め」はコンクリートのことを指す
練積みは目地入れや裏込めを行う手間がかかるため、空積みよりも高額になります。
そのため、2m以下の土留めや土圧がかからないような場所は空積みを行い、費用を削減するように心がけましょう。
2.積み方の違いを分類する
次に、石の積み方の種類を紹介します。
主な積み方は「乱積み(らんづみ)」「布積み(ぬのづみ)」「谷積み(落とし積み)」「崩れ積み」「玉石積み」「小端積み(こばつみ)」「野面石積み(のづらいしづみ)」「間知石積み(けんちいしづみ)」「切石積み(きりいしづみ)」「亀甲積み(きっこうづみ)」の10工事項目に分類されます。
2-1.乱積み
乱積みとは、形や大きさの不揃いな石を不規則に積む石積みのことを差します。
大きい石や小さい石を組み合わせて積み上げていくため、迫力のある塀や石垣を作り上げることができます。
ただし、石の噛み合わせを見ながら積み上げていかなければ安定しません、そのため、専門知識を持ち合わせている上に、長年の経験をもつ職人でなければ乱積みの石積みを施工することは不可能です。
また、強度だけでなく見栄えのことも考えて積んでいかなければ格好悪い外観になってしまいます。
乱積みは職人のセンスが表れる石積みの技法です。
2-2.布積み
布積みとは、段の高さをそれぞれ水平に揃えて積み、目地が横一直線になるように積む石積みです。
目地を横に一直線にすることを「横目地を通す」といいます。
石同士を噛み合わせて積んでいくのではなく、積み木のように積み重ねて行くため、乱積みに比べて強度は劣ります。
ちなみに、かみ合っていない、あるいは繋がっていない状況を建設業界では「縁を切る」、または「縁が切れる」と表現します。
布積みの場合、それぞれの段で縁が切れているため、力が分散せずに圧力が直接目地にかかります。
これが、布積みが乱積みに比べて弱い理由です。
ただし、腕の良い職人がきちんと積めばそれなりの強度はでます。
2-3.谷積み(落とし積み)
谷積みとは、さまざまな寸法(すんぽう:大きさ)の石をうまく組み合わせて、上下の石がかみ合うように積み上げていく石積みです。
またの名を「落とし積み」とも呼びます。
下のように石で谷を作るように並べて、上の石をその谷へはめ込むように積みます。
一つの石が他の石に触れている箇所が多いため、大きな荷重がかかっても力を分散することができます。
3つの工法の中でも一番堅固なため、土留めを目的とした石垣には最適です。
ただ、従来の谷積みは使用する石を一つ一つ手で割って形を合わせていたため、非常に手間がかかりました。
そこで近年では、同じ形のコンクリートブロックが開発され、土留め工事に役立っています。
微調整を行って積み上げていくだけなので、効率よく作業を進めることができます。
つまり、工事費用を抑えることが可能です。
2-4.崩れ積み(くずれづみ)
まず、石積みの王道は「崩れ積み」です。
石積みの中でも古くから行われてきた伝統的な積み方です。造園業に携わる方であれば、誰もが一度は目にしたことがある施工方法です。
石を規則正しく積み上げるのではなく、崩れてきた岩が積み重なるように並べられるのが崩れ積みです。
大ぶりな自然石を使用して、あえて崩れかかったように積み上げることで迫力のある外観を演出できます。
ただ、崩れ積みは空積み工法のため、2m以上の高さに施工することができません。
そこでお勧めなのは、「道路から一段高くなっている場所の土留めに崩れ積みを採用する」ことです。
これにより、風情のある外観を造り出せます。
2-5.玉石積み
玉石積みとは、玉石(たまいし:20~30cm程度の丸型の自然石)と呼ばれる石を使用した石積みのことです。
見た目を良くするために、ほぼ同じ大きさの石を並べて積み上げます。
ちなみに、右の写真の玉石積みは、「往復積み(いってこい)」と呼ばれる積み方です。
またの名を「折り返し積み」とも呼ばれるこの工法は、一段ごとに石の向きを変えて積み上げていくのが特徴です。
また、似たような見た目でも、同じ段で石を3~6個間隔で向きを変える場合、行違積み(いきちがいづみ)と呼ばれる工法に変わります。
どちらの玉石積みも同じように、左右の石と石の間に上下の石が配置されるように積みます。
見栄えの問題はもちろんのこと、そうしなければ強度が著しく下がってしまうからです。
ただし、横に目地が通っている(目地が一直線になる)ため、大きな土圧がかかる土留めには不向きです。
2-6.小端積み(こばづみ)
小端積みとは、鉄平石(てっぺいせき:3cm程度の厚さに平たく割れる性質を持った石材)やレンガなどを用い、これらの側面を見せて積み上げる施工方法です。
オシャレな見栄えを演出できる代わりに、土圧(土が崩れようとする圧力)などの外部からの力には弱いです。
そのため、擁壁(コンクリートの壁)などを前面に積み重ねることがあります。
ただ、材料と手間がかかる石積みなので、工事費用は崩れ積みなどに比べて高額になります。
2-7.野面石積み(のづらいしづみ)
野面石積みとは、自然石の平らな面を表面に揃えて積む工法です。
このような積み方を「乱済み(みだれづみ:石材の大きさや形が不揃いの石を使った石積み)」ともいいます。
さらに、石の平らな面を表に出しているので、野面積みと呼ばれるのです。
一つの石に対して接している石が荷重を分散してくれるため、安定します。
見栄えも良いため、右の写真のように土留めや塀として採用する方は多いです。
2-8.間知石積み(けんちいしづみ)
間知石積みとは、間知石と呼ばれる石を用いた石積みのことです。
石積みの中では、最も土留め工事に適している工法です。
一つの石が6つの石に接しているため、大きな圧力がかかっても力を均等に分散する能力があります。
ただし、間知石積みは練積みが基本のため、水抜きを設ける必要があります。
間知石積みの種類は、石を斜めに並べる「谷積み」と水平に揃える「布積み(ぬのづみ)」があります。
目地が横に通っている布積みの場合、外部からの圧力が横目地に直接かかってしまうため、谷積みのほうが土留めに適しています。
土留めとして利用したり塀に高さがあったりする場合、谷積みによる間知積みを採用することをお勧めします。
2-9.切石積み(きりいしづみ)
切石積みとは、正方形や長方形に切り出した石を使用した石積みのことを指します。
積む際は練積みが一般的なため、土留めに向いた石積といえます。
ただ、加工に手間がかかるため、工事費用は必然的に高額になります。
切石積みは江戸城をはじめとした日本全国の城で採用されており、民に権威を示す象徴とされていました。
2-10.亀甲積み(きっこうづみ)
亀甲積みとは、間知石積みの一種でとされ、天然石を六角形に加工した石材を用いた石積みのことです。
間知石積み同様、石一つ一つが力を分散するため、土留めに適してします。
ただ、間知石積みに比べて石の加工に手間がかかるため、多額の工事費用が必要になります。石積みの中で「最も上品」だと言われています。
また、高度な技術がなければ作り上げることができないため、施工できる業者自体が少ないです。
ただ、天然の石と比べると見栄えは到底敵うはずもありません。
外観を気にするのであれば、やはり自然石を採用することをお勧めします。
ただし、コンクリートブロックと天然石では施工費用が大きく異なるため、予算との兼ね合いを見ながら決めるようにしましょう。
エクステリア工事に限らず、石積み工事はこのページで紹介した10の分類のどれかに属しています。
見た目は異なる積み方でも、施工方法を見ればどの工法で積み上げられているのかを見分けることができます。
3.崩壊の危険性が高い石積みの特徴
崩壊の危険性が高い石積みには共通する特徴があります。
事故が発生してからでは遅いため、崩壊しやすい石積みの見抜き方を知っておきましょう。
最初に、目地が抜けて石と石の間にすき間が生じている石積みは危険です。
練積みでは目地にモルタルが入れられていますが、抜け落ちて穴になってしまっていることがあります。
石積みの強度が低下して地震などで崩れやすくなるため、早めに対処する必要があるでしょう。
また、地盤が変化して積まれた石がずれ、隙間が生じてしまう場合もあります。
次に、水抜き穴に異常が生じているときも注意が必要です。
水抜き穴は石積みの内部に水が溜まらないようにするための重要な部分です。
水抜き穴が泥や砂利などで詰まり、正常に水を排出できない状態になっていると、石積み内部に水がたまって圧力がかかり、崩壊する恐れがあるでしょう。
石積みの間から木が生えている場合も要注意です。
木が生えている場所には当然根が張っており、木が成長するにつれて石積み内部の根も伸びていきます。
成長した根の体積によって石積みが内側から圧迫され、崩れてしまうこともあるので気を付けてください。
そして、石積みの表面が部分的に膨張している場合は特に注意しなくてはなりません。
このケースは、上述した水のたまりや根の成長といった原因によって、すでに石積みが内側から押されている状態です。
いつ崩壊が起こってもおかしくないため、すぐにでも手を打たなくてはなりません。
4.危険な石積みには迅速な対応が必要
上で挙げたような異常が生じている石積みは崩壊の危険があるため、迅速に対処する必要があります。
早めに外構業者へ連絡し、危険な石積みの補修工事を依頼するとよいでしょう。
石積みの補修工事では、モルタル注入などを行って全体の強度を高めます。
モルタルの注入だけでは改善しないほど状態が悪い場合、鉄筋挿入工などの大がかりな工事になる可能性があるでしょう。
鉄筋挿入工とは、棒状の補強材を石積みに埋め込んで補強する工事のことです。
このとき、せっかく業者に補強を依頼しても手抜き工事では状況が改善しません。
そのため、顧客に寄り添って誠実に対応してくれる業者を探すことが重要です。
複数の業者を比較し、しっかりと仕事をしてくれそうなところを選ぶとよいでしょう。
まとめ
もし、エクステリア工事に対する工事費用に余裕がある場合、石積みを検討することをお勧めします。
しかし、多くの方は値段ばかりを気にしてプランニングをしてしまうため、手の込んだ庭造りができません。
手間のかかるエクステリア工事を行うためには、必然的に人工(にんく:人件費)がかさむからです。
そのため、予算がないお客様に対して、高額な工事を勧める外構専門業者(エクステリア業者)はいません。
その結果、ほとんどのお宅は同じような工事内容を採用するため、かわり映えの無い外構が完成します。
ただ、価格ばかりを気にしてエクステリアのグレードを落としてしまうと、使用する材料や製品の質も下げなければいけません。
そのため、工事完了後は綺麗に出来上がったとしても、「一年足らずでボロボロになってしまう」ことはよくある話です。
特に、低価格なブロックやフェンスの劣化は顕著に表れます。
そこでお勧めなのが「石積み」です。石積みは天然石を積み上げて塀や土留め(土が崩れるのを防ぐ壁)を作ります。
天然石は、人工で造りだした材料では味わうことができない魅力を引き出すことができるからです。
つまり、「高品質な庭をあなただけの形で造り上げることができる」ということです。
ただ、手間(人件費)がかかる石積み工事は、コンクリートを使用した工事よりも費用は高くなりがちです。
既に出来上がっているものを設置するのとは違い、石を一つ一つ職人の手で積み上げていかなければいけません。
このページで紹介した方法以外にも、石積み工事は多数存在します。
また、天然石は四季の移ろいを感じさせてくれる上に、雨に濡れることで味わいが増し、風情豊かな外観を演出してくれます。
「外構に石積みを採用したい」と思うのであれば、建物のイメージに合った庭造りを考えた上で外構専門業者(エクステリア業者)に相談してみましょう。
ただ、それを実現させるためには一流の庭師が施工する必要があります。そのため、デザインばかりにこだわるのではなく、優良業者に工事を依頼することを意識しながら業者選びを行ってください。