外構工事に限らず、コンクリートを使用した工事は非常に多いです。コンクリートの特徴は、「高強度」で「耐久性」に優れていることにあります。
ただ、工事を行う職人によってはコンクリートの耐久性が低下し、ひび割れなどを起こしてしまうことがあります。これを防ぐために重要な「水セメント比」の知識について解説していきます。
普段の生活で見かけるコンクリートは、駐車場や壁といった既に硬化して固まったものしか見たことがないと思います。
実はコンクリートはもともと液状の物質であり、固まっていません。コンクリートは「生コン(フレッシュコンクリート)」と呼ばれる液状のコンクリートが元であるため変幻自在です。つまり、デザインさえ決まっていればどのような形でも作り上げることができます。
コンクリートの成分は、「水」、「セメント」、「砂」、「砂利」これらを混ぜ合わせて作っています。また、これらを全て混ぜ合わせたものを「配合」と呼びます。
上記の材料を使えば、自分でコンクリートを練り上げることも可能です。しかし、コンクリート配合は「強度」とイコールなので、全て生コン工場のコンピューターで計算して作られています。つまり、手練りで作り上げた生コンは、「工場で生産された生コンと同じ強度を出すことはできない」ということです。
コンクリート配合は、コンクリートを作り出すためにはとても重要です。配合は「呼び強度」、「スランプ」、「粗骨材の最大寸法」といったもので決まります。
右の写真は、生コンを納品する際に持ってくる実際の伝票です。赤い四角で囲ってある部分が「呼び強度」、「スランプ」、「粗骨材の最大寸法」です。
また、青い丸で囲ってある部分は「JIS規格(日本工業規格)」と呼ばれています。資材の品質を国が保障したマークです。建物や公共工事では、このJIS規格を通った製品しか使用することができません。
なお、工場で生産された生コンでも、構造物によってJIS規格が必要ないものも多数あります。この規格で、最も重要なことを以下にまとめました。
コンクリートの強度は水セメント比で決まる
まず、JIS規格を通過したコンクリートの中で最も重要とされているのは水とセメントの比率です。これを「水セメント比」と呼びます。
水セメント比は、言葉通り水とセメントの比率を百分率で表したものを指します。「コンクリートの強度は水セメント比で決まる」といわれており、現場で「コンクリート配合試験」と呼ばれるものを行います。
また、建築用のコンクリートの水セメント比は50%から65%と定められていて、これを守らなければコンクリートの強度を保つことはできません。
コンクリートが固い場合、現場で加水(水を加える)することでコンクリートを柔らかくすることができます。しかし、加水をすると水セメント比が変わってしまうので、コンクリートの強度が低下してしまいます。
例えば、ホットケーキの粉をセメントと考えれば分かりやすいです。ホットケーキを作る際、水と粉の割合は決まっています。水が少なすぎると粉っぽくなり、水が多すぎてもホットケーキをつくることはできません。
コンクリートも同様です。コンクリート配合での水の割合が大きくなってしまうと、コンクリートは柔らかくなっていきます。コンクリートが柔らかくなっていくということは、セメントの粘りが劣っていくので、「決められた強度ではなくなる」ということです。
つまり、「工場で正確に練り上げられたコンクリート」でも、現場で職人さんが加水をしてしまうと、「強度がないコンクリート」になってしまいます。もちろん、定められた配合でなくなるため、JIS規格は通らなくなります。
現場で加水を防ぐ
やわらかいコンクリートは作業効率が良く、仕上がりはきれいです。しかし、見た目はきれいでも強度が低下しているため、すぐに壊れてしまいます。また、「強度が低下した生コン」も「もともとの強度の生コン」も同じ値段を支払わなければいけないので要注意です。
腕の良い職人なら、固く粘りがある生コンでもきれいに仕上げることができます。しかし、腕の悪い職人は生コンを柔らかくして、ごまかしを行って工事をします。
現場で加水を防ぐ方法は、生コンを発注する際に初めから柔らかい生コンで頼むか、「流動化剤(JIS規格認定)」と呼ばれる薬品を現場で混ぜ合わせるしかありません。工場で練る生コンはJIS規格を通るので、柔らかくても心配いりません。
そして、いつまでも壊れないものを作るために、生コンを使う工事の際は、職人さんに「水は絶対に入れないでください」と伝えてください。あなたのそのひと声で、コンクリート本来の強度を保つことができます。