外構工事(エクステリア工事)に限らず、工事は「設計」から始まります。お客様と打ち合わせが終わり、外構のデザインや工事内容をまとめて、設計士が図面をひきます。その図面が「設計図」と呼ばれるものです。
設計図に書いてある内容は、コンクリートの厚みや鉄筋の配筋(鉄筋を並べること)位置、水勾配(水たまりにならないようにつける傾斜)などの細かい情報が記載されています。
現場で工事をする際、設計図を基に工事を行っていきます。例えば、ブロックを並べたりタイルを張ったりする作業やウッドデッキの基礎の高さ調整など、全ての作業が1mm単位で行われています。
しかし、現場の状況によって設計通りに工事を進めることができないことがあります。設計通りに工事を行うことができないということは、「現場合わせ」をしなければいけないということです。現場合わせとは、設計を無視して現場の判断で施工をすることを指します。
職人の長年の腕と経験で設計より良いものを作り出すことを望めます。現場合わせができるかできないかで、見た目も機能性もよい外構工事をできるかできないかが決まります。
現場合わせをして見栄えのある外構を手に入れる
素人さんだけ限らず、現場監督さえも「設計」にこだわる人がいます。たしかに、工事を行うにあたって守らなければいけないルールは星の数ほど存在します。しかし、設計にこだわったばかりに「見た目が悪い外構」になってしまうことは少なくありません。以下に例を挙げます。
例えば、玄関アプローチ(敷地の入り口から玄関へ続く路)の工事をする際、必ず水勾配をつくることで水たまりができないようにしらなければいけません。
水勾配は建物から道路側へ作るのが基本です。水勾配は2%から3%以上必要と言われています。
しかし、ただ単に水勾配を作っても、必ずしも全ての水が流れていくわけではありません。水には「表面張力」という性質があります。表面張力によって、水はその場にとどまろうとするので、適切な水勾配を作っても水たまりはできやすいです。
たった2%でも、アプローチが10mあれば20cmも高低差を作らなければいけません。しかし、建物のある土地が道路とほぼ同じ高さだと、十分な水勾配を確保することができないことがあります。この場合、設計通りに工事を行うと、見た目が悪い外構になってしまう確率が高くなります。
なぜなら、水勾配を無理やり作ろうとして、建物側の地盤を盛り土(土を盛ること)にしてしまうと、不格好な外観になってしまうからです。
設計にこだわりすぎると良いものはできない
以前、何度も現場合わせを行う場面に遭遇したことがあります。今回の場合、十分な水勾配を作ることができないので、ドレン(水抜き)を設けたり、一部を砂利などにして地面へ直接浸透させたりしてもよいと思います。
頭の固い監督さんや職人さんは、どうにかして設計通りに工事を進めようとするのですが、これは大きな間違いです。
つまり、設計がすべてではなく、見た目や機能性が良くなるのであれば、「自分のもてる技術を最大限に活かせ」との教えでした。
現場に対応したものづくりをするのは職人としての勤めであり、お施主さん(工事依頼主)への心配りであると思います。もし、設計通りに工事進めることができない場面に遭遇する機会があったら、職人さんに「最善の策」を尋ねてみてください。必ず対処法を教えてくれます。
設計通りに工事を行うことは非常に大切です。しかし、現場の状況によって見た目や機能性が粗悪なものになってしまうのであれば、「現場合わせ」を検討してみてください。満足のいく外構工事をするには、あなたの意見が必要です。
筆者:外構職人歴20年・石川公宣