自宅の庭にプライベート空間を作り出すためには、外構工事(エクステリア工事)を行い、目隠しを設けなければいけません。
ただ、家の周りを囲う塀にコンクリートを採用してしまうと、莫大な工事費用が必要になります。なぜなら、コンクリートは材料代が高額な上に、手間暇がかかるからです。
そこで、植栽を活用した生垣(生きた植物によってつくられた垣根)を設けることで、コンクリートを使用した場合に比べ、工事費用を大幅に削減できます。さらに、擁壁(コンクリートの壁)やブロック塀に比べ、やわらかい印象の緑で目隠しを作り上げることが可能です。
植物を利用した垣根の場合、目隠しはもちろんのこと、防犯面も兼ね備えた外構になります。草木の組み合わせや、樹種(樹木の種類)の選び方のポイントを以下にまとめました。
生垣と列植
建物を囲む生垣は、右の写真のようなものが一般的です。
区切りが見当たらないため、一本の樹木に見えるかもしれませんが、何本もの植栽を細かいピッチ(間隔)で植えてあります。そして、葉を均等に切りそろえることで、植物の壁が出来上がります。
また、植物を並べた状態で植えることを「列植」と呼びます。列植の場合、生垣よりもピッチを広くとります。中や外の様子を確認できるため、防犯面の向上に繋がります。
草木を用いて建物を囲う場合、垣根や列植として高さ1~7mぐらいまでの樹木を植え、敷地内を隠します。
ただし、外構工事直後は葉がまばらなため、先ほどの写真のようにしっかりとした壁になるには2~3年かかります。
また、生垣を設ける場所の付近にエアコンの室外機やボイラーがある場合、熱風によって枯れ死の原因になります。そこで、熱風が排出される場所と生垣を最低60cmは離してください。
防犯性に優れた高垣
山間部から吹く冬の冷風を防ぐために、敷地内へ冬風が入る場所に樹高(植栽の高さ)のある常緑樹(常に緑の葉が付いている樹木)を植えると良いです。
また、植える植物次第で、3mを超える高垣(樹高のある生垣)を設けることも可能です。葉の密度が濃いほど敷地内を覗くことができなくなります。
上から覗くこともほぼ不可能です。また、きちんと手入れを行っていれば枝葉をかき分けて中に入ることもできないため、高垣は防犯性に優れています。
ただ、高垣は施工して数年後には隣近所や道路まで枝葉が大きくひろがります。さらに、高さも増すため、高所作業で手入れを行わなければいけません。そのため、ご自身で剪定(せんてい:枝葉を切り落とすこと)を行うには危険が伴います。
もし、建物を囲む外構を高垣にする場合は、メンテナンスの頻度と費用を考慮して植栽プランを立てて、見栄えのある手入れを行うのであれば、専門業者である造園屋さんへ管理を依頼しましょう。
目隠しの程度と枝葉の密度について
住宅の周りを囲む方の大半は、「敷地内を見られたくない」と思って目隠しを設けます。ただ、生垣の場合、植栽によって枝葉の密度が異なります。そのため、向こう側が見えやすくなったり見えなくなったりします。
そのため、庭を完全に隠したい場合または部分的に隠したい場合によって、植栽の密度やピッチ(間隔)を考慮して生垣を設ける必要があります。
本来であれば、植物のピッチを少し広めにとり、樹木の育つ環境を整えます。そして、3年前後に隙間がなくなるように植えるのが一般的です。また、生垣に厚みを出したい場合は、2列以上の植栽をします。
しかし、「植えた当初から完璧な目隠しにして欲しい」というお客さんからのリクエストがある場合このときは植栽のピッチをあえて狭めます。
一方、向こう側が少し見える程度の壁を作る場合、落葉樹を少し混ぜたり樹木のピッチを少し広めにとったりします。
ただ、都心部のような住宅が密接した地域の場合、植栽を植える幅を十分に確保できない可能性があります。その際は、フェンスなどを用いてツル科の植物を絡めて緑の壁を作ります。
ただし、全体に伸びていくまでに長い年月がかかります。そのため、外構工事直後から壁面高くまで緑化するのには適していません。種類によっては1mを超えるツル科の植物もあるのですが、通常(30cm程度)のものに比べ値段が跳ね上がるので注意してください。
とはいっても、植物は月日と共に成長し続けます。きちんと手入れを行ってさえいれば、見栄えのある上に、防犯性に優れた外構になります。
なお、このページで述べてきた通り、不審者の侵入防止を目的とする場合、生垣は大きな効力があります。
生垣の幅を厚くしたり、生垣を作る際にピッチを短くしたりする他に、ツルの場合は中に支えとなるフェンスや支柱が入ります。そのため、安易に侵入できなくなります。
また、植える植物をトゲのあるものにすると、不審者は嫌がります。生垣を設ける際は、これらのことを考慮して、敷地内へ侵入することが困難な外構を作り上げてください。
筆者:外構職人歴20年・石川公宣