近年の土地の購入といえば、大きな土地を何区画にも分けて販売する「造成地(ぞうせいち)」を選ぶ方が大半です。孤立した土地を購入するより安いからです。
さらに、ここに建てられた家を分譲住宅、または分譲宅地といいます。
ただ、分譲住宅・宅地では土地の大きさが周り近所とほぼ同じです。そのため、建物の配置や外構(エクステリア)にこだわりを持たなければ、見栄えの無いつまらない外観になりかねません。
特に、都心部のように住宅が密集している場所では、敷地を有効活用しなければ、狭すぎて使い勝手の悪い庭になってしまいます。
ただし、エクステリアのプランニング次第で、小さな土地を大きく見せることが可能です。例えば、フェンスで開放感を出したり、樹木で遠近感を出したりするなど、さまざまな工夫ができます。
逆にいえば、お気に入りのアイテム(ウッドデッキや植栽)をむやみやたらに配置してしまうと、ただでさえ狭い分譲住宅・宅地の庭をより小さく見せてしまうので注意が必要です。
そこで、このページではエクステリア工事を行い、狭い土地を広く見せる3つの方法を紹介します。これを活用することで、小さな空間に広がりが生まれ、土地の狭さを感じさせないほど開放的な庭づくりができます。
エクステリア内に曲線部を作る
エクステリア工事では、小さな土地を大きく見せる方法として、庭のスペース内に曲線部を作ります。
特に、アプローチ(敷地の入り口から玄関までの路)や園路(えんろ:庭の中道)は目立つ場所に位置するため、ほとんどのお宅のエクステリアはカーブを描くように作られています。
曲線を描いて先を見えづらくすることで、空間に奥行が生まれるからです。
また、一直線に作るよりも、単純にアプローチや園路の距離が長くなるので、広く見えるという効果もあります。
実際に、雑誌やインターネットで紹介されているお宅の外構を見ると、人が歩く路や飛び石(歩くために設けられた石)は蛇道のように作られています。
反対に、直線を意識して作られているエクステリアはシンプルに見え、モダンなイメージを与える庭になります。
ただし、あまりにも極端に曲線を描くことばかりを意識してしまうと、まとまりの無い外構になってしまいます。あくまでも、敷地の大きさと様式に合わせてプランニングすることが大切です。なにごとも、「適度が良い」といわれるように、さりげなく空間に広がりを与えるようにしましょう。
植栽の高低差で遠近感を出す
外構工事を行う大半の方は、必ずと言ってよいほど庭に植栽を植えます。ただし、樹木は気を付けて配植(植物を配置すること)をしなければ、圧迫感が生まれてしまいます。
草木を植える際は、敷地の外から見て門に近い前方に背の高い植栽を、建物に近い後方に低い木を置くと遠近感が出て広く見えます。
高木(たかぎ:3mを超える樹木)は場所をとると思われがちですが、樹種(樹木の種類)によってはコンパクトに収まります。
例えば、トネリコやツリバナなどの株立ち(一本の茎の根元から複数の茎が分かれて立ち上がっている樹木)の木であれば幹が細く、上に向かって伸びるため、それほど気になりません。
同じ大きな土地であっても、大きさの違う植栽をばらばらに配置することで、小さな土地であっても圧迫感を与えません。
なお、庭に植える植物を選ぶ際は、幹の太さや枝葉の広がりも考えて配植するようにしましょう。葉や枝の密度が高い樹木ばかりを植えてしまうと、訪れた人に窮屈な印象を与えるからです。中でも、向こう側が見えないほど枝葉の厚みがある樹木は、圧迫感が大きいです。
その場合、できるだけ見た目がすっきりしていて、さらに薄い色の葉を付ける樹木を選び、建物全体の印象を和らげることを意識して下さい。そうすることで、小さな庭でも開放的な印象になり、ストレスを感じることが無くなります。
抜けのあるフェンスで圧迫感を防止する
狭い庭では、フェンスの種類や素材選びに注意しましょう。いくら目隠し効果が高いからといって、高いコンクリート塀などを設けては圧迫感が出てしまいます。これでは、実際の大きさの庭よりも小さく感じてしまいます。
この場合、格子状のウッドフェンスやアイアン(金属製の)フェンスなど、空間に抜けのあるアイテムを活用しましょう。
あるいは、生垣(いけがき:植栽などを等間隔で並べて作る垣根)を設ける際も同じように、向こう側が少しでも見えるような樹木を選ぶようにしましょう。
要するに、「狭い庭で孤立した空間を作ってしまうと、開放感が損なわれてしまう」ということです。これは、エクステリアプランを立てる際に大切な知識になるため、覚えておきましょう。
このページで述べてきた通り、エクステリアを少し工夫するだけで、小さな土地であっても広く見せることができます。土地選びを行う際は、大きな土地にこだわるのではなく、あなたの家族を含めた全員のライフスタイルに適した土地を選別しましょう。
筆者:外構職人歴20年・石川公宣