私たちが生活している町の中で、「コンクリート構造物」をよく見かけると思います。
駐車場や家の周りを囲む壁、あるいは高層ビルなどはコンクリートでできています。これらを、コンクリート構造物といいます。
これまで、コンクリート構造物に亀裂(クラック)が入っているものを見かけたことがあるかと思います。
外構工事でコンクリートを使った工事は多々あります。コンクリートを扱う工事では、「亀裂が入らないようにする」ということを意識して仕事をしなければいけません。
亀裂は「見た目」が悪くなるだけでなく、本来の「強度」を保つことができなくなる可能性が出てきます。
職人目線だけでなく、素人から見る「コンクリートの亀裂」はとても見栄えが悪いです。また、お施主さん(工事依頼主)であれば、高額な工事費用を支払ったのに亀裂が入っていたら、凄く不安になると思います。
初めから出来上がっているブロックやタイルと違い、コンクリートを扱う工事は決まった形が存在しません。「生コン」と呼ばれる液状のコンクリートを使用するため変幻自在です。生コンは液状なので硬化するまでの作業を現場で行います。
コンクリートに亀裂が入るのは、実は理由があります。100%亀裂を防ぐことは不可能ですが、「コンクリートの性質」を理解している職人さんなら、亀裂が入る可能性を最小限に抑えて施工することが可能です。コンクリートに亀裂が入る理由を以下に述べたので確認してください。
なぜ亀裂が入るのか?
まず、コンクリートに亀裂が入る理由の中で、一番多いのは「鉄筋が入っていない」ということです。
コンクリートの性質は、「圧縮力に強い」が「張力(引っ張る力)には弱い」とされています。つまり、コンクリートだけでは一年足らずでボロボロになってしまいます。
張力に弱いとは、例えば車がコンクリートに乗り上げると、タイヤが乗る場所だけに荷重がかかります。土や砂利なら沈みますが、コンクリートは沈むことがないので、荷重がかかった場所が割れていきます。
そこで、張力に強い「鉄筋」を入れることで、コンクリートの弱点である張力をカバーすることができます。これが「鉄筋コンクリート」と呼ばれる構造物です。
また、高層ビルやトンネルも鉄筋コンクリートで作られています。鉄筋コンクリートは、構造物の中で最も強度があり、地震が来ても崩れることはありません。
昔作られたコンクリートの道路や壁は、鉄筋が入っていないものがとても多いです。崩れてボロボロになっているものは鉄筋が入っていない可能性が高いです。
外構工事を依頼する際、鉄筋を入れているか必ず確認をしてください。例えば、駐車場のコンクリートで使用される鉄筋は、「ワイヤーメッシュ」と呼ばれるものを活用します。
駐車場のコンクリートであれば、ワイヤーメッシュを用いるだけで亀裂を最小限に抑えることができます。
しかし、コンクリートの敷均し(平らに均す)をする際、「正しい仕上げ」をしなければ亀裂が入ってしまいます。
コンクリートが硬化する際、水分が蒸発したり地面に浸透したりして抜けた水分の量だけ沈みます。
全体的に均等に沈むのですが、鉄筋が入っている場所は沈みにくいので、その落差によって亀裂が入る場合があります。
まだやわらかいうちに仕上げをすれば治るのですが、そのまま放置してしまうと鉄筋の形で亀裂が入り、そのまま硬化してしまいます。
これを避けるためには、仕上げ作業を最低2回以上行わなければいけません。(季節や気温で仕上げ回数は異なる)
何回も仕上げ作業に入ることで沈み亀裂の発生を防ぎ、さらにコンクリートの締固めの役割も果たします。
つまり、コンクリートに亀裂が入るということは、「職人の腕が悪い」ということとイコールです。なぜなら、コンクリートは「JIS規格」と呼ばれる日本工業規格に基づいて生産されているからです。コンクリート自体が粗悪だから亀裂が入るということはまずあり得ません。
しかし、コンクリートに亀裂が入ってからでは遅いです。外構工事を行う前に今回の知識を取り入れ、職人さんと話をしてみてください。そうすれば、職人さんは「手抜きはできない」と判断するので、質の良い工事をしてくれます。
ただ、コンクリートを用いた工事は自然を相手にするものです。「100%亀裂が入ることはない」ということはあり得ないので、頭の中に入れておいてください。
筆者:外構職人歴20年・石川公宣