庭をつぶして駐車スペースを作りたい、または増設したいという工事の依頼は意外に多いようです。
更地に新たに駐車スペースを作る場合と、既存の庭をつぶして作る場合とでは、やはり後者にかかる費用のほうが大きくなります。元々あったものを撤去するだけでなく、新たに土留めなどの処置が必要になると、それらの費用もかかってきます。また、駐車スペースを土間コンクリートにするのか、レンガや砕石貼りにするのか、カーポートや壁、ドアの有無などによっても費用は変わります。
今回は、既存の庭(の一部)を駐車スペースにする場合にかかる費用を中心に、主なプランごとにご紹介します。この記事を読むことによって、駐車スペースのための外構リフォームに関する資金計画が立てやすくなると思います。
1.既存のものを撤去するための費用
駐車スペースを作るには、車が載る部分を整地する費用と舗装する費用が必要です。加えて、ブロック塀や植木など、現在庭にあるものを撤去する場合は、撤去費用が必要となります。また残土が出た場合はその処分費用も必要です。
この項では、駐車スペースにしたい場所に、ブロック塀や植木など、既存のものがある場合に、それらを撤去するためにはどの程度の費用が必要なのかについてご説明します。
1-1.ブロック塀を撤去する費用
ブロック塀を撤去するためには、解体工事と解体して発生した残骸を処分するための運搬・産廃処理が必要になります。
方法としては、ブロック塀の一部を撤去するなら、ディスクグラインダーなどの研削道具でブロック塀に切り込みを入れ、残す箇所を崩さないように注意しながら解体します。目に見える部分だけでなく、地中の基礎も掘り起こすことになるため、ユンボなどの重機を使うこともあります。また、残存箇所をモルタルなどで補修する際はその費用も加算されます。
幅3m程度のブロック塀をカットして解体し、駐車一台分のスペースを砂利などで固めるだけの場合で、施工期間は1日、費用は10~15万円ほどになるでしょう。
1-2.植木を撤去する費用
木の根元付近から切除する場合は、1本あたり5,000円~35,000円程度となり、一般的に高さや幅があるほど高額になります。直接駐車する場所ではないが、邪魔なので伐採する場合は、このような切り株を残す形になります。
駐車スペースとなる箇所に植木がある場合は、根から掘り起こさなくてはなりません。その場合、伐根費用として上記の額に数万円追加されることが多いです。ただし幹の幅が30cm以上などの太い木は、根が建物の基礎などに影響していることがあります。無理に抜根すると、建物や擁壁に何らかの不具合を及ぼす恐れも出てきます。いずれにせよ、専門家に現地を確認してもらう必要があるでしょう。
1-3.新たに土留めを施工するための費用
駐車スペースをつくる場合、前面道路と敷地の入り口の高さを合わせる必要があります。道路との高低差がある敷地で、家の周囲のブロック塀を壊して駐車スペースを作る場合、多くは新たにコンクリートブロックなどで土留め対策をとる必要があります。
その場合、既存のものを再利用することはできませんので、あらたにブロック積工事が必要です。基礎が1mあたり4,000円前後、コンクリートブロック2段積み工事の場合で、1㎡あたり6,000円前後が相場かと思われますが、条件によって異なるので、見積依頼をとったほうがいいでしょう。
この項では、既存の庭に撤去すべきものがある場合の費用例をご紹介しました。ここからさらに駐車スペースを整地し、舗装するための費用をご紹介します。撤去すべきものがある場合は、これらの費用も考慮の上、資金計画を立てておきましょう。また、場合によっては撤去のみ、解体専門業者などに依頼したほうが割安になることもあります。
解体業者と外構業者、どちらからも見積してもらうことで、費用を節約できるかもしれません。
2.舗装するための費用
駐車スペースは、土むきだしでは車を汚すことになります。タイヤ部分にだけ枕木を敷き、あとの部分は芝を植えるといった簡単な方法もありますが、メンテナンス性を考えるとおススメできません。やはり土間コンクリートを施工するのが一般的です。
また、滑りにくい洗い出しコンクリート施工や、駐車スペースの一部を乱石貼りにするなどグレードアップした施工をする場合、やはりかなりの追加費用がかかってきます。
ただし、昨今のオープン外構では、駐車スペースがアプローチを兼ねることも多いため、お金をかけてでも見映え良くするということも大切です。この項では、駐車スペースの舗装にかかる費用のめやすをグレードごとにご紹介します。
2-1.土間コンクリート敷きにかかる費用
まずは、もっとも一般的な土間コンクリートについてみていきましょう。
施工の手順としては、まず下地として砕石を敷き込んだ層をつくります。施工する形状に型枠を設置し、コンクリートのひび割れ防止のためにワイヤーメッシュを敷き込みます。その上からコンクリートを流し込み表面を金コテや刷毛引きなどで仕上げ、数日養生して完成です。自動車1台分として一般的な駐車スペースをつくる場合、20万円前後かかると思われます。
<1台分15㎡の費用例>
- 再生クラッシャーラン:3,500円/㎡ 52,500円
- メッシュ敷き込み:900円/㎡ 13,500円
- 土間コンクリート:6,500円/㎡ 97,500円
- 枠入れ・ばらし:20,000円
ただし、外構全般工事の場合、重機廻送費用や運搬費、その他諸経費などが別途(7~15万円程度)かかってくることが多いため、駐車スペース1台分でも、これらの費用が上乗せされる可能性は大きいでしょう。
2-2.洗い出しコンクリートにする場合
洗い出しとは、下地コンクリートの上にモルタルを流し砂利を撒いてたたき込みながら表面を均し、硬化する前に表面を水で洗い流して砂利を浮き出させる舗装技術です。技術・工期・材料費が余分にかかるぶん、やはり費用はコンクリートのみの仕上げより、平米単価が10,000円ほど高くなるでしょう。
しかし、カラーモルタルや色石を利用することで、土間コンクリートより華やかな印象になるのは大きな利点です。また表面に凹凸があるため滑りにくく、タイや跡も目立たないというメリットもあり、駐車スペースに採用する価値は大きいと思われます。
2-3.天然石貼りなどワンランク上の仕上げをする場合
駐車スペースが玄関へのアプローチを兼ねている場合、コンクリートのみだと味気ないので、一部を石貼りにするお宅も多いようです。
駐車スペース全体に石を施すケースは多くありませんが、一部分のみに天然石を採り入れたデザインはよく見られます。1㎡あたり20,000円前後で施工できることが多いため、敷地入り口の2㎡程度を乱石貼りにし、アプローチとして彩るのも素敵でしょう。
やはり、エクステリアはその家を飾るお化粧のようなものなので、多少費用が多めにかかったとしても、ある程度の華やかさを出したほうがいいかもしれませんね。
2-4.砂利で舗装する場合
庭を駐車場にリフォームする際、最も費用を安く抑えられる舗装手段が砂利です。コストが抑えられるだけでなく、砂利は踏むと音がするので防犯面で役に立ちます。また、コンクリートとは異なり、強い照り返しが気になる心配もありません。
砂利で駐車場を舗装するデメリットは、メンテナンスに手間がかかることです。定期的に砂利を継ぎ足したり、雑草を除去したりする必要があります。
また、砂利が古くなるにつれて砂ぼこりが立ちやすくなることもデメリットの一つです。その他、駐車の際に砂利がはねて車を傷つける、落ち葉の掃除に手間がかかるといったデメリットも挙げられます。
駐車場を砂利で舗装する場合の費用相場は5~10万円程度です。上記のようなデメリットを認識したうえで、それでもコストを抑えたいという人は砂利での舗装を選ぶとよいでしょう。
2-5.アスファルトで舗装する場合
一般家庭で採用されることはあまりありませんが、アスファルトで舗装するという方法もあります。アスファルトによる舗装のメリットは表面がきれいに仕上がり、施工後すぐに使えることです。
しかし、コンクリートなどに比べてデザイン性に乏しい点はデメリットといえるでしょう。また、古いアスファルトは剥がれやすくなるので注意が必要です。
アスファルトによる舗装工事の費用相場は10~20万円程度です。
ただし、1台分程度のスペースでは対応してくれない場合も多いので注意してください。複数台の車を駐車できるスペースを設ける場合は、アスファルトにすることでコストを抑えられるでしょう。
3.屋根・ドア・壁の有無による費用の差
駐車するためだけのスペースを作るには、前項のような費用となりますが、屋根やドアを取り付けるとその分の費用がかかってきます。また3方向に壁があるガレージを作る場合は、建造物とみなされますので、建築確認申請が必要となります。建蔽率や容積率、固定資産税評価にもかかわってきます。
この項では、プラスする設備によってかかってくる費用の違いをご紹介します。
3-1.屋根なしの駐車スペースにかかる費用
これは、前項でもご紹介した通り、整地・舗装(撤去物がある場合は、解体撤去)のみになるため、それらの費用のみが必要となります。駐車スペース1台分あたり、20万円くらいから施工できるでしょう。
3-2.カーポートにかかる費用
屋根と柱のみで構成されたカーポートを取り付ける場合、商品によって価格差はありますが、1台分で10~20万円の費用が必要になると思われます。
既製品が敷地サイズに合わない場合、現地でカットすることもできますが、その分の費用が1カ所あたり5,000円ほど上乗せされることがあります。
3-3.オーバードアなどを取り付ける費用
画像引用元:LIXIL
駐車場入り口に伸縮式ゲートやオーバードア(上の画像のような跳ね上げるタイプのドア)を取り付ける場合は、1台分でも20~40万円ほどの費用がさらにかかってくるでしょう。伸縮式のゲートは10万円以下でも施工できますが、電動タイプのオーバードアはかなり高価になります。
ただし、ドアがあることによって防犯対策は確実に上がりますので、メリットは大きいでしょう。
伸縮式ゲートやオーバードア以外に、チェーンポールまたはシャッターを取り付けるという選択肢もあります。チェーンポールは名前のとおり、数本のポールにチェーンをかけて第三者の侵入を防ぐものです。
開放感を維持しつつ、安価に防犯性を高められるので多くの人に選ばれています。チェーンポールを取り付ける場合、費用相場は10万円前後です。
ただし、ポールのタイプやサイズなどによって費用は異なるため、事前に確認しておく必要があります。
シャッターは駐車場と外部を完全に遮断できるため、最も防犯性能に優れたフェンスです。駐車場のシャッターには、全面目隠しのスラットタイプや、通気性に優れたグリルタイプなどの種類があります。
プライバシーを重視するのか、採光や通気性を重視するのかといったポイントによってタイプを選ぶとよいでしょう。
また、シャッターには手動タイプと自動タイプがあります。施工の費用相場は、手動なら50万円前後、自動なら70万円前後です。
3-4.壁ありのガレージにかかる費用
シャッター付きの車庫など、柱と壁、天井で構成されたガレージを作る場合は、車一台分でも10㎡以上となることが多いため確認申請が必要になります。そのための費用として6~8万円程度が工事費とは別にかかってきます。また固定資産税の評価対象となります。
建てるための費用としては、既製品なら100万円前後で建てられることもあります。建築する場合は、素材にもよりますが200万円以上かかることが一般的でしょう。
建蔽率や容積率にもかかわってきますので、必ずしっかりとした業者で建築確認申請からの手続きをして設置する必要があります。
4.庭から駐車場へのリフォーム費用を抑えるコツ
庭から駐車場へのリフォーム費用をなるべく抑えたい人は、いくつかのコツを押さえておきましょう。
まず、タイヤが乗る部分のみをコンクリート舗装にするという方法が挙げられます。コンクリートは優れた舗装手段ですが、他の方法に比べてややコストが高めです。しかし、全面を砂利敷きにするとメンテナンスの手間がかかるうえに、砂利がはねて車を傷つけるなどのリスクがあります。
そこで、コンクリートはタイヤが乗る部分のみに使い、その他の部分を砂利などにすることで、コストを抑えながら使いやすい駐車場が実現します。砂利の代わりに芝生などを敷くとよりおしゃれな駐車場になるでしょう。
次に、人目に触れない部分にはお金をかけないようにすることも節約のポイントです。
駐車場のリフォームでは、業者の意向に従うだけでなく、施工の内容を自分でも確認することが重要です。駐車場のブロックは外から見える部分のみ化粧ブロックにするなど、自分なりに工夫を凝らすことでコストをなるべく抑えるとよいでしょう。
5.依頼する際の注意点
駐車スペースの工事は、土木業者や左官業者によって行われます。また解体をともなう場合は解体業者も入ります。外構業者の下請けになるため、各業者の利益と外構業者の利益も乗せられます。
この項では駐車スペースの工事を依頼する前に、注意しておきたい点についてご紹介します。場合によっては、費用をかなり抑えられるかもしれません。
5-1.工事範囲が狭すぎると断られたり割高になったりすることも
外構全体の工事に比べ、駐車スペースのみなど単独の工事は単価が割高になることがあります。これは、たとえ1カ所だけの工事であっても、重機廻送のための費用などは同じようにかかってくるためです。
また割高になるのを避けて、左官業者などに直接依頼しても、駐車スペース1台分のみなどの小規模な範囲の場合、工事自体を請け負ってもらえないこともあるようです。外構専門業者などなら、プランニングから業者手配まですべて一括でできるので手間がかからず、駐車スペース1台からでも快く見積してくれることが多いでしょう。
ただし、解体業者だけ個別に依頼するなどの方法で費用が驚くほど削減できることもあります。そのためには面倒でも、個別に見積依頼をし、比較してみることが重要です。
5-2.複数社から相見積もりを取り検討する
このページでは、参考として費用のめやすをご紹介しましたが、実際に地域や敷地の条件などによって、かかる費用は変わってくるため、必ず現地調査をしてもらったうえで、詳細な見積を取るようにしましょう。できれば3社以上の業者から見積を取り比較検討しましょう。詳細な見積明細書を取れば、何にどのくらいの費用がかかるかが分かり、相場を把握することもできます。
工事依頼をするには相見積もりは必須です。面倒でも必ず比較する対象をつくり、一社のみで決定しないようするのが、費用を抑えるにはもっとも重要です。
5-3.駐車しやすさを考慮する
庭を駐車場にリフォームするときは、駐車しやすさを考慮することも大切なポイントです。
スペースに余裕がないと駐車しにくくなるため、きっちりの大きさで考えるのではなく、ややゆとりのある設計を心がけてください。
一つの目安として、車1台で幅3m×奥行き5.4m以上のスペースを確保するとよいでしょう。車体が大きい場合は、より大きな駐車スペースを割く必要があります。
また、十分なスペースがあっても、駐車場の構造や周辺の設備によって駐車しにくくなるケースもあります。
駐車場周辺の倉庫や駐輪場など、障害物になり得るものの存在は頭に入れておきましょう。周辺の見通しに配慮し、夜間の駐車に備えて照明を設置するなどして安全性を高めてください。
5-4.固定資産税に気を付ける
駐車場を施工するときは固定資産税にも注意しておきましょう。
壁があるガレージなどは条件を満たすと建物とみなされ、固定資産税が発生します。
「屋根があって3方向以上が壁や建具で囲われている」「作業などに利用できる」「土地に固定されている」といった条件を満たす場合は建物と認定され、思わぬ出費が発生することもあるので気を付けてください。
なお、建物として認められる駐車場を設けるときは建築確認申請が必要となります。
6.施工事例
工事前、工事後の写真を用いて施工事例をいくつかご紹介していきます。あなたの希望の工事の参考してみてください。
施工事例1.
元々、一台分の駐車場は設置されていましたが、お子様が車を購入するのと、旦那様の趣味での車の購入がかさなり、いっきに2台の車が増えることになりました。
そこで、お庭を切り開いて、駐車場を作りたいとのご相談でした。
施工前
施工後
施工事例2.
元々、1台分駐車場があり、その既存の駐車場の奥にもう1台分の駐車場を作りました。工事の理由は、奥様用にもう1台の増車の為とのことです。
こちらのお庭の土質は、水はけが悪く、雨が降るとぬかるむので、増設した分の駐車場の雨水を庭に流せません。
そこで、駐車場の真ん中に溝をつくり、雨水管に接続して雨水を処理しています。
工事前
工事後
施工事例3.
工事のご依頼主様のご実家です。ご実家のお母さまが年齢を重ねてきたということで、依頼主の娘さんご一家と同居することになりました。
娘さんご一家は、お母さまの通院を手助けするためにお車を所有することになり、ご実家のお庭を切り開き、駐車場を作りたいとのご相談でした。
7.まとめ
庭をつぶして駐車スペースへリフォームするには、撤去するものがあるか、どのような素材を使うのか、カーポートやドアを付けるかなどによって必要な費用はかなり変わってきます。もっとも安くつくるには整地とコンクリート舗装のみの施工になりますが、それでも20万円前後はかかることが多いでしょう。
またカーポートを付けることによって、雨風や砂埃を避け車のダメージを軽減することができたり、ドアを付けることによって防犯性が高まったりと、費用をかけたぶん得られるメリットも大きいです。
駐車スペースが玄関へ続くアプローチを兼ねている場合は、一部を乱石貼りにするなどのエクステリアの一部としての見映えも大切です。
求めるとキリがありませんが、せっかくのリフォームならなるべくまとめて行った方が費用は少しでも安く済むことが多いものです。後悔のないように計画して、より使い勝手良くリフォームしたいですね。
筆者:外構職人歴20年・石川公宣