庭や駐車場を機能性もあってスタイリッシュに整える工事といえば、土間コンクリートを思い浮かべる人は多いと思います。
土間コンクリートを目にすることはあっても、具体的な施工法や費用について知っておきたいポイントは多いものです。
この記事では、まず土間コンクリートの基本的な知識を紹介し、そのうえで大まかな施工工程とメリットや注意点、費用相場などを解説していきます。
目次
1.土間コンクリートとはそもそもなにか?
土間コンクリートとは、平面的に塗装したコンクリートのことをいいます。主に地面に施すもので、色は白や薄い灰色に仕上がるためさまざまな建物に合わせやすく、芝生など緑との相性もよいのが特徴です。耐久性が高く、やや傾斜をつけるように施工すれば水捌けのよい土間になります。
表面の仕上げには「コテ仕上げ」や「刷毛引き仕上げ」などがあります。「コテ仕上げ」は、でこぼこをなくして平らに仕上げる方法で「刷毛引き仕上げ」は、刷毛を使って線状の模様を入れ、ザラザラした表面に仕上げる方法です。部分的にタイルや石を貼ったり目地に芝生を植えたりと、好みに合わせて容易にデザインすることもできます。手入れもしやすいために、駐車場や玄関先といった屋外によく使われています。
このように用途が広いのが魅力的ですが、工事をしっかり行ってもひび割れが起こりやすいのが欠点です。ひび割れを防いで耐久性を上げるには、ワイヤーメッシュや鉄筋を組んで補強する必要があります。
2.土間コンクリートの大まかな6つの施工工程
土間コンクリートの施工工程は「地面の掘削」「砕石の敷き詰めと転圧」「型枠の設置」「ワイヤーメッシュの設置」「コンクリートの流し込み」「表面の仕上げ」の6つに大きく分けられます。ここでは、それぞれの工程について解説していきます。
2-1.地面の掘削
土間コンクリートの施工に欠かせないのが、地面の掘削です。コンクリートの厚みを出し、補強するための鉄筋などを組むには地面を削らなければなりません。そのため、最初に行う工程がコンクリートを流し込めるように地面を掘削することです。地面を掘る深さはだいたい20〜30cm程度といったところでしょう。工事の内容にもよりますが、通常の工事であればこれくらいの深さは必要です。
掘削作業には、一般的に重機が用いられます。掘削工事にはそれなりの音が発生しますし、近隣迷惑を考えて進めなければなりません。そのために作業時間は日中に制限されるのが一般的です。さらに、掘削で不要な土も出ますし、廃棄する際は法令に準じて適切な処分が求められます。こうした事情から、地面の掘削作業については残土処理もセットになっています。
2-2.砕石の敷き詰めと転圧
地面の掘削作業が終わった後に行うのが、砕石の敷き詰め作業です。砕石を敷き詰めておくことで、コンクリートを施工した後の沈下を防ぐことができます。砕石を敷き詰めることは、施工面をまんべんなく平らに仕上げるうえでも欠かせない重要な工程です。もちろん、ただ敷き詰めればいいというわけではありません。敷き詰めた後はしっかり突き固めておくのも大切なことです。この作業を転圧といいます。
転圧が不十分な状態だと、仕上がってから表面がひび割れる原因になります。転圧作業に用いるのが転圧機やローラーなどです。作業の所要時間はそれほどかかりません。例えば、駐車場1台分程度なら30分ほどで完了できます。ただし、雨天のときは作業自体がストップするため、天候によっては工期がずれる恐れが出てきます。屋外作業の場合は、すべての工程において進み具合は天候に左右されるのが一般的です。
2-3.型枠の設置
土間コンクリートに使うコンクリートは、液状になっています。流し込む際、何もしない状態で入れてしまうと周囲に流れ出してしまいます。流れ出すのを防ぎ、きれいな形状に作るためにも欠かせないのが型枠の設置です。型枠には、通常はコンパネと呼ばれる板が使われます。コンパネとはコンクリートパネルの略で、そもそも「コンクリート型枠用合板」が正式な名称です。
強度も高く繰り返し使えることから、コンクリートを流し込む際の型枠としてよく使われています。曲線にする場合は、コンパネの他にヌキ板なども使用しながら曲線を作っていきます。型枠を作る際、高さや勾配にずれがあってはきれいな土間コンクリートになりません。そうならないよう、水糸を張って施工する形状に沿って丁寧に設置していきます。型枠は、メーター換算で行うのが原則です。例えば、25平方メートルなら1辺5mにしたものが4辺必要になります。そのため、20mの型枠工事を行います。
2-4.ワイヤーメッシュの設置
型枠の設置ができたら、ようやくコンクリートを流し込む準備が整います。ただ、これだけでは十分な強度を作れません。コンクリートの強度を上げるために必要なのがワイヤーメッシュの設置です。ワイヤーメッシュは「溶接金網」という別名を持っています。ワイヤーメッシュは、その名の通りワイヤーとワイヤーを網目状(マス目状)に溶接したものです。こうして金網にしたものがコンクリートの内部にあるだけで、強度を増すことが可能になります。
ワイヤーにはさまざまな種類や太さがありますが、土間コンクリートで使われるのは6mm程度のものが一般的です。コンクリートの特徴として、圧縮には耐性があります。しかし、横に引っ張られるともろいという特徴も持っています。その弱点をフォローできるのがワイヤーメッシュなのです。最近では、ワイヤーメッシュを敷いていく作業を省略するための「PP短繊維散布工法」というアプローチも、利用されるようになってきています。
2-5.コンクリートの流し込み
コンクリートが流れ出ないための型枠、そしてワイヤーメッシュの設置が終わったら、ここでようやくコンクリートの流し込みです。コンクリートは、専用のミキサー車やトラックで運び込まれます。流し込む際に注意しておきたいのが、コンクリートの濃度です。コンクリートは薄くても濃すぎてもいけません。では、濃度によってどのような問題が出るのでしょうか。
コンクリートが薄すぎてしまうと、固まった後でワイヤーメッシュに沿う形でひび割れになることがあります。これでは、せっかくワイヤーメッシュを入れた意味をなさなくなります。逆に濃すぎた場合に起こりやすいのが、ワイヤーメッシュが割れる現象です。これは、ワイヤーメッシュがコンクリートの重さに耐えられないために起こるもので、いずれにしても後々トラブルが起こる可能性が高くなります。濃度は注意したい点ですが、コンクリートを流し込む段階までくれば土間コンクリートの工事はほぼ終盤です。80%程度は完了したと考えていいでしょう。
2-6.表面の仕上げ
表面の仕上げは、土間コンクリートの最終工程です。表面の仕上げは、コンクリートを流し込んだ後、乾かないうちに行います。柔らかいうちに表面を整えておかないと、平らな土間コンクリートはできません。人気が高く主流の仕上げは表面をツルツルにするコテ仕上げです。しかし、ツルツルにすると雨天時や雪が降ったときなどは滑りやすいというデメリットを持っています。そのため、玄関前のアプローチ部分や坂道に用いる場合は、刷毛引き仕上げで刷毛目をわざとつけることもあります。
刷毛目があると表面に細かい凸凹が線状にでき、滑りにくくなるためです。表面の仕上げは他にもさまざまなものがありますが「洗い出し一発仕上げ」も人気の高い仕上げ方法です。「洗い出し一発仕上げ」とは、コンクリートが乾く前に表面だけを洗い流す手法で、こうすることで内部の砂利が見えるようになります。砂利が見えるとそれがアクセントになり、見た目の印象も変わります。一口に土間コンクリートといっても、表面の仕上げ方によって印象はさまざまです。建物や庭全体のバランスを見ながら、工事をする前によく考えておくといいでしょう。
3.土間コンクリートにするメリットと注意点
土間コンクリートは耐久性が高いだけでなく、掃除もしやすいなどメリットがたくさんあります。
その一方で、ひび割れのリスクもあり、DIYには向いていないといった点は注意しておきたいことです。
ここでは、土間コンクリートの主なメリットと注意点について解説していきます。
3-1.メリット
土間コンクリートの代表的なメリットにあげられるのが、耐久性の高さです。一度施工しておけば、30年以上にわたって使い続けることができます。砂利などを敷いた場合は、車の重みで沈んだり歩行によって流出したりという問題が起こりがちです。その点、土間コンクリートならそういった心配がありません。はじめの工事費はかかりますが、メンテナンス費用が必要ない分、長い目で見れば経済的といえるでしょう。
掃除がしやすいことも、土間コンクリートの見逃せないメリットです。表面の汚れが気になった場合は、水で流すだけできれいにできます。デッキブラシなどで擦っても傷む心配がなく、野良猫や鳥の糞害があっても簡単に掃除でき、清潔に保てます。土間コンクリートにすると雑草が生えないのもメリットの一つでしょう。雑草は、取るだけで相当の手間がかかります。暖かい時期は、定期的に何度も草取りをしなければなりません。雑草対策で悩んでいるなら、土間コンクリートはぴったりな対策です。
駐車場を土間コンクリートにすれば、車が汚れにくい環境を作ることもできます。土が露出している場所に車を停めると、雨天時などの泥はねで車が汚れる原因になります。特に雨の日は困っている人も多いでしょう。水たまりができればタイヤに泥がつきますし、靴が汚れる原因です。
3-2.注意点
説明してきたように、土間コンクリートは耐久性が高いという特徴を持っています。しかし、先述した通りひび割れのリスクはゼロではありません。どれほどしっかり工事を行っても、ひび割れをすることもあります。また、コンクリートで覆ってしまうため、ガーデニングを趣味にする人にとってはデメリットになるでしょう。ガーデニングを楽しみたいときは、あらかじめ計画して専用の場所を確保する必要が出てきます。
駐車場を土間コンクリートにするときは、工事が完成するまで車を停められないのもデメリットです。事前に他の駐車場を確保しておくなど、手間や借りる場合の費用が発生します。費用を節約したいという理由で、DIYで土間コンクリートを施工したい人もいるでしょう。ところが、素人がやった場合は色ムラやひび割れ、水たまりといった問題が起こりやすくなります。土間コンクリートの施工には、細かい技術がたくさん求められます。失敗を避けるなら、施工はプロに任せるほうが無難です。
4.土間コンクリートの施工期間は?
土間コンクリートの工事を行う際、規模に応じて施工期間は異なります。とはいっても、そこまで日数がかかることはありません。せいぜい1〜3日程度といったところです。ただし、天候によっては日程がずれ込むことを想定しておく必要があります。
また、施工自体は数日でも、コンクリートが硬化するには長い時間を要します。その点も考慮が必要です。例えば、歩行するにはおよそ3日、車の出し入れができるようになるには最低7日程度は見ておく必要があります。
コンクリートの強度を完全に確保したいなら、施工後1カ月程度はみておくと良いです。その間、重いものを置くのも望ましくはありません。コンクリートは、温度が高ければ高いほど固まりが早まるという性質を持っています。そのため、天候や季節は土間コンクリートの完了時期を左右します。その点にも留意し、工事の日程を決めることも大切です。
5.土間コンクリートの施工費用は高い?
土間コンクリートの工事には、説明してきたように多くの工程を必要とします。トラックやミキサー車といった車両や重機も使うため、施工費用が高くなりがちです。
ただし、どのような使い方をするか仕様によっても施工の単価は変わります。そのため、あくまで目安でしかありませんが、1平方メートルあたりの相場は1万〜1万5000円といったところでしょう。実際に依頼するときは、事前に見積もりを取る必要があります。
同じ土間コンクリートの工事を行うにしても、工事費用は業者によってさまざまです。見積もりは、1社だけにせず、複数社から取ると比較できます。また、一旦土間コンクリートを施工すると、リフォームするときに高額になりやすいことも念頭に置くといいでしょう。
6.まとめ
土間コンクリートは耐久性が高く、地面を覆うことで雑草対策にもなります。メリットが多い反面、完成までにはいくつもの工程が必要です。
費用が上がりやすい点で悩む人もいるのではないでしょうか。業者によっては、費用が高額になったり工事を手抜きされたりというリスクも出てきます。
業者選びで迷ったときは、一度外構専門業者へ相談するといいでしょう。悩みに寄り添いながら、適正価格で高品質の施工を提供してくれます。
業者選びで失敗してしまうと、手抜き工事を施されてしまい再度工事が必要になってしまう恐れもあります。昨今ではGoogleの口コミといった、実際に依頼したお客様の生の声が聴けるため、ぜひ参考にしてみてください。
筆者:外構工事職人歴20年 石川公宣