家を新築するとき、外構にこだわる人は少なくないでしょう。また、外構も含めての家づくりが理想かもしれません。フェンスもその一つです。
ただし、家の境界にフェンスを立てるときは、隣家とのトラブルになる可能性もでてきます。
ご近所さんとは日常的に交流する機会が多いので、不要なトラブルは避けたいものです。
そのためにも、事前に必要な対象法を知っておきましょう。
目次
1.家の境界にフェンスを設置する目的は?
初めての土地に家を建てるとき、外構が完成してようやく落ち着くのではないでしょうか。外構の一つにフェンスがあります。
こちらには、家の周りを囲むものとのイメージがありますが、どのような目的で設置されるのか。
まず、家の境界にフェンスを設置する目的を紹介していきます。
1-1.境界を明確にするため
まず、周辺との境界を明確にする目的が挙げられます。境界フェンスを設置することで、自宅と隣家や道路との境界をはっきりするために役立つからです。
境界を把握できるものとして、境界杭や境界標があります。しかし、それらがなくても、境界フェンスがあると一目瞭然です。どこからどこまでが自分の敷地なのか、第三者が見てわかることも大きなメリットだといえます。
境界があいまいだと、自分の敷地内に車や人が入ってくるかもしれません。それが一時的なものだとしても、あまり気持ちがよいものではないです。
しかし、フェンスを立てることで境界がはっきりするので、車などの侵入を防ぐことができます。また、人や動物などの侵入にともなう不快な思いの解消にもつながるでしょう。
もし、自分の敷地内を通り道として利用されている場合や、よその子どもが勝手に入って遊ぶ場合などは、思い切ってフェンスを立てるとよいでしょう。
1-2.外からの視線をさえぎるため
自宅は家族で集う大切な場所であり、日頃の疲れを癒しリフレッシュできる場所でもあります。
明日への活力を養うためにも、家にいるときは他人の目を気にすることなく、のんびり過ごしたい人も少なくないです。
このようなとき、境界フェンスが役立ちます。フェンスは外からの視線をさえぎる役割も持っているからです。
特に、隣家との距離が近すぎる場合や、人通りの多い道路が目の前にある場合は、他人からの視線を感じやすくなります。
そのようなとき、境界フェンスが目隠しの役割を果たしてくれます。
目隠し目的でフェンスを立てるときは、1~1.8mくらいの高さを意識するとよいです。通常のフェンスよりも高めを意識することで目隠しになり、プライベートな空間確保にもつながります。
人目が気にならないので、家族の趣味などを満喫できます。もちろん、自分の子どもやペットを庭で遊ばせても安心です。また、フェンスのデザインや隙間を意識することで、圧迫感の軽減にも役立ちます。
もちろん、デザインなどによっては、外からの視線を完全にさえぎれるとは限りません。それでも、境界フェンスを立てることで、外から丸見え状態の回避には役立ちます。
1-3.おしゃれに見せるため
家を囲むフェンスは、家の印象を決める大事な部分です。外構のなかでも目につきやすいため、道案内のときに使われることも少なくありません。
案内を受けたほうも、フェンスを目印にすると目的地にたどり着きやすくなります。特に、おしゃれで個性的なフェンスは周辺からもよく目立ちます。
そのため、見た目を重視したデザインにこだわる人もいるかもしれません。
実際、フェンスにはいろいろなデザインがあります。そのため、プライバシー保護を意識しながらも、自分なりのこだわりを反映させたいものです。
落ち着いた木目調デザインを選ぶのも一案です。庭のなかに植えた樹木と組み合わせるのもよいです。種類の異なる格子を組み合わせたデザインもおしゃれかもしれません。
フェンスは自宅の敷地内からも見えるだけに、見ていても楽しくなる心地よい空間を実現できます。
もちろん、デザインを重視するだけでなく、強度や採光、風通しなどを意識することも大切です。
2.境界フェンスを立てるときに起こりがちなトラブル
境界フェンスを立てることで、近隣との境界をはっきりさせ、プライベート空間確保にも役立つことがわかりました。しかし、フェンスを設置した結果、思わぬトラブルに発展するかもしれません。そうならないためにも、境界フェンスを立てたときに起こりがちなトラブルを把握しておく必要があります。
まず、考えられるのは、自宅にフェンスを立てたために、隣家に日が当たらなくなってしまうケースです。プライバシーを守るためには、高さがあり、板と板との隙間が狭いフェンスが理想ですが、それが裏目に出ることも少なくないのです。
また、隣家の日差しをさえぎらなくても、フェンスの存在自体が圧迫感を与えてしまい、ストレスになることも考えられます。
さらに、フェンスが隣家との境界をはみ出してしまうケースもあります。その一つにブロック塀が挙げられます。こちらを立てるときは、ブロックの転倒を防ぐための大掛かりな基礎工事をしなければなりません。
もし、境界線のはみ出しがわかった場合は、基礎工事からやり直す必要がでてきます。しかし、施工が完了してからやり直すためには、地面を掘り直すなど大変な手間暇がかかってくるのです。
3.境界フェンスの設置で隣家とのトラブルを避ける方法
境界フェンスを設置したために、隣家とトラブルになっては大変です。フェンスのやり直しに労力やお金がかかるだけでなく、交友関係が悪化する恐れも少なくないからです。
そうならないためには、隣家とトラブルが起きないように心得ておかなければなりません。ここでは、トラブル回避に役立つ方法を3つ紹介していきます。
3-1.事前に境界をはっきりさせておく
隣家との境界にフェンスを立てるときは、事前に境界をはっきりさせておく必要があります。もし、それを怠ってしまうと、フェンスを立てるときに境界の位置で揉めるかもしれません。
不要なトラブルに発展させないためにも、事前に境界をはっきりさせておきましょう。そのとき、不動産を購入した際の図面などが役立ちます。また、隣家ともしっかり話し合い、境界を確認し合っておくとよいです。
もし、隣家との境界ギリギリにフェンスを立てるのなら、より一層の注意が必要です。基礎が地中で張り出していると、設置が難しくなると考えておくと良いです。
このような場合、少し内側にフェンスを立てるのが理想です。また、図面で確認しながら場所を決めることで、フェンスが境界を越えることを防げます。
3-2.隣家の日差しや通風への影響を考慮する
家の間取りを考えるとき、そのときの周辺環境を意識して決めることが一般的です。玄関や勝手口などの位置だけでなく、リビングや寝室などのレイアウトを左右することにもつながります。特に、リビングは家族が集まる場所であり、日当たり重視で決めることも少なくないです。
自宅にフェンスを立てることで起きる隣家への影響として、日差しや風通しが考えられます。日当たりや風通しのよい環境がフェンスの出現により一変、これまでよりも状態が悪くなることもあります。フェンスを立てるときに、そこまで意識しないかもしれません。
しかし、自分が逆の立場だったらどうでしょうか。隣家に迷惑をかけないためにも、日差しや通風しなどで支障がでないかどうか、第三者目線で考えてみましょう。そのためには、フェンスの高さも大事な条件です。最大でも2m以下にするのが望まれます。
3-3.フェンスを立てることを伝えておく
境界フェンスを立てるときは近隣への配慮が必要だとわかりました。しかし、自分で思っているだけでは相手に伝わりません。思ったことを行動に移さない限り、相手に伝わらないことを知っておく必要があります。
もちろん、フェンスの設置も例外ではありません。フェンスの工事前には、隣家にあいさつをしてフェンス設置の説明をしましょう。そのとき、フェンスの高さやデザインなども伝えておくと、イメージしやすくなるので親切です。
もし、隣家への断りなしに突然工事を始めてしまうと、隣家の心証を悪くしてしまいます。その結果、トラブルに発展することも多いのです。さらに、境界フェンスの件が発端となって、些細なことでクレームが来るようになるかもしれません。
家を建てるときは、その地域に馴染んでいくとの決意が必要です。もし、近隣トラブルが発生しても、安易な引っ越しは難しくなります。そうならないためには、こちらから下手(したて)に出で、誠意を示すことが大切です。また、謙虚な姿勢を保つことで、隣家との良好な関係づくりにも役立つでしょう。
4.隣家との境界があいまいな場合はどうしたらいい?
境界フェンスの設置に先立ち、隣家と話し合って納得してもらうことが大切だとわかりました。そのためには、低姿勢で臨むことも大事なポイントです。しかし、境界があいまいな場合は、話が難航することも少なくありません。
また、工事のときに境界杭が動くことや、劣化などによって境界標が見つからない可能性もあるでしょう。そうなると当事者同士での解決は大変困難です。境界をはっきりさせるためにも、土地家屋調査士に依頼して調べてもらいましょう。
土地家屋調査士は国家資格で、不動産に関する登記の専門家です。そのため、土地や家屋に関する調査や測量もできます。
また、不動産の表示に関する申請手続きなどを代理で行うことも、土地家屋調査士の大事な仕事です。土地家屋調査士の意見を取り入れることで、話し合いが進展する可能性がでてきます。
もし、土地家屋調査士に調査依頼しても解決できないときは、弁護士に相談する方法があります。その際には、工事の差し止め請求などに発展することも考えておきましょう。
5.場所ごとに違う!境界フェンスの選び方
隣家との境界をはっきりさせる、自宅の目印にできるなど、境界フェンスにはいろいろな役割があることがわかりました。
それだけに、境界フェンス選びは楽しみですが、悩むこともあるでしょう。もし、選択を誤ると不便な思いをしたり、近隣に迷惑をかけたりするかもしれません。
では、どのようなものを選べばよいのでしょうか。ここでは、境界フェンスの選び方について場所ごとに説明していきます。
5-1.道路との境界はデザインにこだわる
こちらに立てるフェンスは、多少お金がかかってもデザイン重視で選ぶとよいでしょう。道路に接する面は人目に付きやすいからです。
特に、外からの視線をさえぎるために立てる場合は、その目的にかなったものを選ぶことが大切です。なかでも、隙間が狭いフェンスを選ぶとよいでしょう。
また、家が持つ雰囲気と合わせて違和感がないように設置することも大切です。たとえば、洋風の家ならレンガとの組み合わせを工夫するとよいでしょう。
鋳物フェンスにはデザイン性があるので、個性的な雰囲気を醸し出すのに役立ちます。また、和風の家なら竹垣フェンスにする方法があります。
こちらは、岩や植栽などとの相性もよいため、落ち着いた雰囲気づくりにも一役買うでしょう。
このように、フェンスを立てるときは、家の外観を意識しながらアレンジを楽しむことができます。そのためには、門柱や門扉などとのバランスを考えることも大切です。
5-2.隣家との境界はシンプルなものを
一方、隣家との境界に立てるフェンスはシンプルなものがおすすめです。特に、隣家との境界がわかればよいだけの場合、低いシンプルなフェンスで十分です。
その一つ、メッシュフェンスには価格が安く施工が早いなどのメリットがあります。また、境界は思った以上に長いことも多いので、低価格のフェンスにすると費用を抑えることにもつながります。
また、シンプルなフェンスを選ぶことによる思わぬ副産物にも注目されています。フェンスによっては表裏があるので、設置方法によっては隣家とトラブルになるかもしれません。
しかし、表裏のないフェンスなら、そういった隣家との不要なトラブルが避けられます。さらに、適度な隙間のあるのものなら、近隣とのコミュニケーションが取りやすくなります。このように些細な気配りをすることで、近隣との良好な関係づくりに役立つでしょう。
まとめ.
プライバシー確保などのために役立つ境界フェンスですが、自分だけの判断で立てるのはよくありません。
特に、隣家の境界に立てる際には、トラブルを避けるための配慮が必要です。また、フェンス設置に際しては施工業者選びも重要です。
やはり、正しい知識や豊富な経験をもとに、お客様の立場になって熱心に取り組んでくれる施工業者に依頼したいものです。
そのためには、この記事で紹介したことを参考にしてみてください。
筆者::外構職人歴20年・石川公宣