庭と道路の間にフェンスを設置していない家に住んでいると、思った以上に外からの人の視線が気になることが悩みになりがちです。
その悩みの解消におすすめなのが、目隠しフェンスの設置です。既に目隠しフェンスの設置を検討していても、具体的にそれが可能なのか、どんな外観になるのかなどが気になっている段階の人もいるでしょう。
ここでは、目隠しフェンスの種類や設置する際のポイントについて、詳しく解説します。
目次
1.庭に目隠しフェンスを設置する目的は?
まず、庭に目隠しフェンスを設置する一般的な目的を3つ紹介します。
1-1.プライバシーの保護
最もよくある目的としては、プライバシーを保護するために設置するというものです。ガーデニングが趣味で、素敵な庭の演出をしている人の中には、むしろ道行く人に自慢の庭を見てもらいたいと思う人もいるかもしれません。
しかし、そんな理由でもなければ、自宅のプライベートな空間が誰にでも見られる状態になっていることを嬉しいと感じる人は少ないのではないのでしょうか。
見られたくない理由は、家の中を見られたくない理由とさほど変わりないものでしょう。干してある洗濯物を見られたくない、きれいに手入れしておらず散らかっている庭を見られたくないといった理由があります。
また、ガーデニングに凝っている人であっても、自分が作業をしている姿を誰かにじろじろ見られるのは決して気持ちのいいものではないでしょう。
服装や身なりを気にすることなく集中してガーデニングに没頭したければ、人の視線が気にならない環境であることがやはり理想的です。
1-2.防犯性能アップ
庭がプライベートな空間であることをはっきりさせることは、人の視線を遮る効果を得ることのみにとどまりません。
道路と庭の境界線をはっきりさせることで、人や動物が簡単に入り込めなくなるのです。
境界線がぼんやりしていると、人の土地に侵入しているという意識を持ちにくいため、特に悪気がなくても人が立ち入りがちになります。
その点、フェンスがあればフェンスの向こうは人の家の敷地だと明確にわかるので、不用意に人が入り込んでくることを防ぐことができるのです。
もちろん、悪意のない人だけでなく、実際に不審者が窃盗などの目的で家を狙ってくる場合もあります。
そんな場合にもフェンスのある家はない家よりも入りにくい家だという印象を与えることができるため、防犯効果も期待できるのです。
1-3.デザイン性の向上
目隠しフェンスを設置することで、家の外観が閉鎖的に見えたり、気に入っていた外観が見えなくなってしまったりということを気にする人も少なくはいます。
しかし、今は目隠しフェンスにもさまざまな素材やデザインのものがあります。目隠しフェンスを設置することで、殺風景だった庭が逆におしゃれな景観へと大きく変化する可能性もあるのです。
目隠しフェンスをデザインの上でマイナスにとらえず、家の外観にもう1つのデザイン要素が加わると考えるといいです。
自宅の外観とさまざまな目隠しフェンスの素材やデザインを組み合わせてみて、トータルで外観のコーディネートを考えてみることで、目隠しフェンスをプラス要素ととらえられれば、それは大きな楽しみとなるのではないでしょうか。
2.目隠しフェンスにはどんな種類がある?
では、具体的にどんな目隠しフェンスがあるのかを、素材別に紹介していきます。
2-1.樹脂フェンス
樹脂製のフェンスは、樹脂(プラスチック)と木粉を混ぜて作られたものです。本物の木ではありませんが、木目のような加工をしてあるものもあります。
ナチュラルカラーからダークブラウンまで色のバリエーションも豊富ですし、デザインもさまざまなものがあります。さすがに天然木のぬくもりには及ばず、素っ気ない印象もありますが、逆に本物の木ではないことの利点として、メンテナンスのしやすさが挙げられるでしょう。
最大の利点は腐食をしないことです。目隠しフェンスは屋内と違って常に紫外線や雨風にさらされるので防腐剤を使うことが多いのですが、樹脂製フェンスには防腐剤を塗装する必要がありません。水にも強く、耐久性にも優れています。
長年使用していれば紫外線による色褪せは避けられませんが、簡単なお手入れだけできれいな状態を保つことができるのです。もちろん、ささくれやひび割れとも縁がありません。ただし、木製のフェンスよりも初期費用が高くかかるのですが、その分維持費用や手間がかからないことを考えれば高く感じないかもしれません。
樹脂製フェンスは手軽に木製の雰囲気を取り入れることができるおすすめの素材です。
2-2.木製フェンス
素材に強いこだわりがある人にとっては、木製フェンスの魅力は非常に大きいのではないでしょうか。やはり本物の木の温もり、自然な色や風合いがあり、ナチュラル感を重視した家やカントリー調のインテリアの家、それに植物との相性も抜群です。
その他の魅力としては、初期費用が安く抑えられる点があります。見た目や素材感、香りなど、嫌味なく自然を感じられる点においては右に出る素材はないでしょう。
逆に木製フェンスのデメリットを挙げると、耐久性がなく劣化が早い、メンテナンスに手間がかかるなどのことがあります。ささくれができてしまうと自分で簡単な修繕はできますが、怪我の心配もあるでしょう。
また、劣化をなるべく防ぐためには、定期的なメンテナンスが必要です。オイルステインやニスなどの塗装を、半年に1度くらいの頻度ですることになるので、塗装に使う塗料や道具を必要に応じて揃える必要があります。さらに、ひび割れや反り返りなどが起こってしまうと、修理あるいはフェンスの買い替えをすることになるのです。
自然な風合いを活かした素材には、他に生垣・竹垣などがあり、景観が美しく和風の家にはぴったりです。ただし、これらも天然のものであるだけに定期的に剪定をしたり、腐食や虫食いなどが起こっていないかチェックしたりする必要があります。
2-3.金属製フェンス
金属製フェンスには、アルミ製、スチール製、アルミ鋳物フェンスなどがあります。アルミ製は軽量で耐久性が高いのが魅力です。直線的なデザインに向き、モダンでスタイリッシュな印象を演出できます。ただ、衝撃に弱いのが難点です。
スチール製の魅力は安価なことと、アルミに比べると衝撃に強く耐久性も高いこと、そして何かと機能的なところでしょう。特にメッシュタイプのものは目隠しの効果は弱いですが、逆にいえば視界を妨がない、通気性や採光性が高い、防犯性の高い加工もしやすいなどのメリットが多く、フェンスとして多くのシーンに取り入れられている素材です。メンテナンスも簡単で、DIYでの加工もしやすいなど、扱いやすさもその人気の秘密の1つでしょう。
また、アルミ鋳物フェンスというのは、本来はヨーロッパで発展した手工芸鍛造であるロートアイアンの雰囲気を再現したものです。ロートアイアン調のフェンスは鉄ではなくアルミによって作られていますが、ねじりや曲線などのデザインに強く、ヨーロッパ風の洋風の建物やガーデニングともよく合います。デザインが豊富で、高級感や重厚感が抜群ですが、デザイン面が重視されるだけに機能面に欠けるところが難点です。
3.目隠しフェンスを設置する際のポイント
では、実際に目隠しフェンスを設置する際に、おさえておきたいポイントを4つ紹介します。
3-1.周囲の環境と合うものを選ぶ
まずは、どんな素材やデザインの目隠しフェンスを選ぶかということがあります。そもそもの目的には、庭を無防備に人目にさらされないようにしたいこと、道路との境界をはっきりさせ、むやみに他人や動物が入ってこないようにするといったことがあるでしょう。それとともに、自宅の外観や環境との調和、自分自身の好みといった要素も含めて選ぶことになります。
ただ、なるべく失敗がないように選ぶことを重視するのであれば、家の外観や近隣の環境の中に気に入ったフェンスを置いてみたときに、違和感なくすんなりとなじむかどうかで判断することをおすすめします。
自分が気に入ったからといってあまりにも個性的な色やデザインのフェンスを選んでしまうと、その環境の中で悪目立ちして浮いてしまうでしょう。大切なのは、設置したときの状態を何度もイメージしてみることです。それでもうまく色を選ぶ自信がなければ、家の外壁に似た色や近い色を選ぶと失敗しません。
色だけでなく、フェンスの間隔など細かいことも、設置した状態をイメージし、圧迫感や違和感を覚えないものを選ぶようにしましょう。
3-2.最適な高さを考える
次に、フェンスの高さを考えてみましょう。最適なフェンスの高さは、やはりまず第1に、どのくらいの高さであれば目的が果たせるかということになるでしょう。通りすがりの人の視線を遮りたい場合には、大人の男性の目線の高さから考えると、フェンス全体の高さを180cm以上〜200cm前後程度にするのが目安です。
色や素材を決めるときと違って高さを考えるときには、周囲から家の外観や近隣環境にフェンスを設置した状態をイメージするだけでは足りません。フェンスで囲まれた庭の中にいる状態もイメージしてみましょう。
人の視線を遮ることができるということは、逆にいうと庭側からは見通しが悪くなり、圧迫感を感じたり日当たりや風通しも悪くなったりしてしまうということです。特に、濃い色や重厚感のあるデザインのフェンスを選んだ場合には、それほどフェンスに高さがなくても圧迫感を感じやすくなるので慎重に決めましょう。
また、日当たりや風通しが悪くなると、どうしてもジメジメしやすくなりカビや苔が発生する原因になります。そのせいで家の外壁や建物全体の寿命が短くなるリスクもあるでしょう。
圧迫感を感じずに目隠しをしたければ、メッシュタイプなどのフェンスを設置し、背の高い植物を特に見られたくない箇所に植えるなどといった対応方法もあります。
3-3.通風や採光に影響しないか考える
通行人の視線を遮るためにフェンスを設置する場合、日当たりや風通しにまったく影響しないようにするのはなかなか難しいかもしれません。しかし、なるべく大きな影響が出ないよう考慮することはできます。
フェンスを取り付ける位置や向きによって家の中までの日当たりや風通しが大きく変わるようであれば、それらを損なわないフェンスの設置位置や向きを工夫することが必要です。また、フェンスの板の間隔を広めに取るなど、目隠しとしての機能面を若干犠牲にするという方法もあるでしょう。
また、日当たりや風通しが変化することで、既に庭に生えている植物の生育状況が変化してしまうかもしれません。家にある植物に日照不足に弱い性質がないかなど、その特性とフェンスとの相性も考えておくとベターです。
3-4.隣家との境界を明確にしておく
そもそもフェンスを希望どおりに設置できるのか、という問題があります。これについては、不動産購入時の土地の図面を前もってチェックして明確にしておく必要があるでしょう。もし隣家との境界線があいまいなのであれば、後になってトラブルが起きる可能性が高くなります。
フェンスを設置したいと思ったら、自分の家の事情だけでどんどん設置を進めてしまわずに、前もって隣家の人たちにフェンスを設置したい旨を伝え、問題があれば解消しておく必要があるのです。
もちろん、家でリフォームなどの何かしらの工事をする際には、騒音や悪臭などが発生することが多いでしょう。そのため、隣家の人たちにはフェンスの設置に限らず、必ず工事前に工事の連絡をしておくのがマナーです。
4.目隠しフェンスはDIYできる?
DIYが趣味で、日頃からいろいろなものを手作りすることに慣れている人なら、自分で目隠しフェンスもDIYできないか、と考えるのは自然なことでしょう。
もちろん、ラティスを活用したり、すのこや結束バンドなど簡単な材料で作ったりということは可能です。
しかし、理想の目隠しフェンスを設置しようと思うと意外に重労働になってしまいますし、長年安全にフェンスを使い続けたければDIYのレベルでは難しい点がいろいろとあります。
少なくとも、長持ちはしないので定期的に設置し直す必要があるでしょう。
台風や大雨といった災害が起きたときに飛ばされたり流されたりすれば、近隣の人に迷惑がかかる恐れもあります。
台風や大雨にも耐えられるほどの目隠しフェンスを求めるなら、プロに依頼して基礎からしっかりと、経年劣化にも強いフェンスを設置してもらうのがやはりおすすめです。
まとめ.
庭にフェンスを設置すると、庭が他人の視線に無防備にさらされることを防ぐことができ、さらに自分の土地と道路との境界もはっきりさせることができます。
また、防犯面の効果も期待できるので、より安心して生活することができます。
実際の設置は、正しい知識や豊かな経験をもとに、お客様の立場になって取り組んでくれる業者に依頼したいものです。
設置の際には、この記事で紹介したことを参考にしてください。
筆者:外構職人歴20年・石川公宣