昨今はオープン外構が大半で、閉鎖的なエクステリアは敬遠されがちです。
とくに新築の場合、これからのご近所付き合いを円満に進める必要があります。あまりにも隠された外構は、ややもすると印象を悪くする可能性もあります。だからと言って、道路や隣家から丸見えの、プライバシーが守られない生活は落ち着きませんね。逆に、近隣の人も目のやり場に困ることもあるかもしれません。
このページでは、これから新築外構を計画する方のために、通行人や近隣からの目隠し対策についてまとめたいと思います。施工費用相場はもちろん、選びかたやトラブル防止のために注意したいポイントについて考えていきましょう。
目次
1.目隠し対策は必要?
境界線から1m未満の距離に「隣地を見通せる」窓やベランダなどを作る場合、目隠しの設置をしなくてはならないことが民法で定められています。では、1m以上の距離を保てば、目隠し対策は必要ないということなのでしょうか。
結論としては、当人同士が気にしなければ目隠しが義務付けられているわけではありません。
しかし、すでに隣地に家が建てられている土地に新築する場合、あえて隣地の庭や窓の真向かいに窓やベランダを設ける、というのは気分の良いものでないことはたしかです。
この項では、法的なことはもとより、マナーや気遣いという面から考えて視線に対する対策を考えていきたいと思います。
1-1.後から建てたほうが対策するのがマナー
民法235条に観望施設の制限という項目があります。これは「境界線から垂直1m未満の距離に、隣接地を見通すことができる窓やベランダ、縁側などの施設を設置する場合、目隠し対策をしなくてはならない」というものです。また目隠し対策がされないことに不満があるバ場合、先に建てた側から目隠しの請求をすることができます。ただし、先に建てた側が、境界から1m未満の位置に窓などを設置している場合は、この限りではありません。
しかし、法律のうえで正しいことだとしても、一方的に要求するのはトラブルのもとになります。
そして、どちらの家も境界線から1m以上離れていたとしても、窓が向かい合うような形になるなら後から建てたほうが気配りするべきです。法的には問題がないのですが、相手側からするとかなり不愉快な状況であると思われます。要求されるまで対策しないという考えもありますが、要求がある前に目隠し対策をするのがマナーでしょう。
ただし、大人の背以上の高さがある、すき間のない目隠しなどは、嫌味に受け取られることもあります。できれば、事前に目隠しを立てたい旨を相談し、大げさでないものを選ぶようにしましょう。
法的に問題があるにしろ、ないにしろ、今後、ご近所と円満にお付き合いしていくためには、後から建てる側が配慮するのが、穏便に済ませる方法ではないでしょうか。
1-2.接道面の目隠し対策は?
一般的に、道路側は室内が見えないように対策されることがほとんどだと思われます。
しかし、南側が接道面である敷地の場合、庭を道路側にもってくるケースは多いです。庭に出ることが多く、道路からの目が気になるときは、接道面にも目隠し対策を考えたほうがいいかもしれません。
昨今は、オープン外構が主流で、庭がまったく見えないようなクローズド外構はあまり見られません。プライバシーは大切ですが、車や自転車、庭などがまったく見えないエクステリアはおススメしません。閉ざされた外構にすると、近隣付き合いを避けたい家庭だと受け止められる可能性もあります。
自治体によっては、緑化対策のため、ブロック塀など透過性のない囲いを推奨しない場合があります。そうした場合は、ブロックにスリットを入れたり、塀の外側に植栽したりといった対策が有効です。
いずれにせよ、目隠し対策はやりすぎは禁物です。あくまでもさりげなく、自然な印象になるようにしたいものです。
2.目隠しフェンスの種類と施工費用相場
では、具体的に目隠し対策を施すにあたって、どのような種類のものがあるのでしょうか。
一般的には、目隠しといっても完全に隠れるわけではなく、ある程度の透過性があるものがほとんどです。また、家側からはよく見え、外側からはあまり見えないタイプのもの、真正面から見るとまったく見えず、横から見るとやや見えるといったタイプのものもあります。
施工の仕方としては、従来のフェンスと同様に、二段積ブロックなどに立てる方法と、地面に直接柱を立てる方法があります。素材はいろいろですが、最近は木目調などのラッピングが施されたアルミ形材が主流となっています。
この項では、これらの目隠しフェンスやスクリーンの種類を施工するための費用相場とともにみていきましょう。
2-1.もっともポピュラーな目隠しフェンス
もっとも人気のあるのは、境界フェンスなどと同様に、コンクリートブロックや化粧ブロックの上に施工される木目調のアルミ形材です。既製品の場合、本体1枚当たりの幅は2m弱が主流です。本体以外にも柱や部品が必要となります。外構専門業者での相場は、材料費が定価の35~40%引きです。これに取付施工費と基礎・コンクリートブロック積み工事費用が加わります。
新築外構の場合、他と一緒にすると工事代も割安になるかもしれませんが、4m(2枚)の施工で、基礎から取付までした工事費用は3~4万円ほどになると思われます。これに材料費が加わります。
画像引用元:LIXIL
上記のような定価が4万円台の、高さ80cmの目隠しフェンスを4m施工する場合、材料費+工事費で11~12万円ほどはみておきましょう。ただし、これはあくまで目安なので、他の工事との兼ね合いや選ぶ素材によっても変わってきます。必ず、業者から見積をとって確認してください。
2-2.高さのあるスクリーンフェンス
さらにスタイリッシュな目隠し対策としては、地面に直接柱を立てるスクリーンフェンスがあります。このような高さがあるスクリーンタイプのフェンスの場合、コンクリートブロックなどでは支えきれなくなります。そのため、独立基礎ブロックと呼ばれる穴の開いた1本だけの柱を立てるブロックを使用するのが一般的です。材料費はやはり定価の35~40%引き、施工費として4~6万円程度みておいたほうがいいでしょう。
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スクリーンタイプのものは高価なので、クオリティにもよりますが、定価15万円程度で高さ1.8mのものなら、4mの施工、材料費込みで25~30万円前後かかると予想されます。
3.目隠しフェンスのデメリットはこう防ぐ
プライバシー対策としてはぜひ採用したい目隠しフェンスですが、いっぽうでこんなデメリットも挙げられます。
- 陽当たりが悪くなる
- 風通しが悪くなる
- 圧迫感を感じる
この項では、これらのデメリットを解消するために有効な種類のフェンスをご紹介します。
3-1.風通しを確保したいならルーバーフェンスで
しっかり目隠しはしたいけれど、すき間のあいたフェンスでは不安、そして風通しが悪くなるのも避けたい人には、ルーバーフェンスがおススメです。ルーバーとは、細長い板を枠組みに対し平行に、角度をつけてすき間を空け取り付けた形状のものです。
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角度をつけずに平行に取り付けたものより、すき間が見えにくいぶん目隠し効果は高くなります。正面からはフェンスの向こう側がほぼ見えなくなります。
しかし、実際にはちゃんとすき間があるので、風通しを確保できるだけでなく、角度がつけてあるぶん強風にあおられても風をうまく抜けさせられるため、破損などの危険が少ないこともメリットです。
3-2.明るさを確保できるポリカーボネートパネル製フェンス
適度に目隠しできればいいから、明るさは確保したいというなら、ポリカーボネートパネル製のフェンスがおススメです。
ポリカーボネートとは透明プラスチックの一種で、ガラスの200倍以上、アクリルの40倍の耐衝撃性があると言われています。カーポートやテラス屋根の材料にもされています。「ポリカパネル」と略して呼ばれることが多いです。
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多少透けて見えるので、人影などは分かりますが、目線が遮られれば十分だという場合におススメしたい素材です。光が取り入れられるので、物干しスペースや南側の家からの目隠し対策に最適だと言えるでしょう。
上の画像商品のように、枠の一部、目線が気になる場所だけにポリカパネルを施工すれば、通風も確保できます。また、最近ではルーバータイプのポリカパネル製フェンスも販売されています。
3-3.植栽でさり気ない目隠し対策
「いかにも目隠ししています」という感じにはしたくないけれど、通り過がりの人の目はある程度遮りたいという場合は、植栽で工夫するのがおススメです。
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だからといって、昔の家のように、塀状にびっちりと植えられた生け垣のようにすると、現代にはそぐわない気がしますね。おしゃれさもあり人気なのは、枕木状の角材を立て、周りに植栽を施すやりかたです。木の色と緑のバランスが良く、目隠しというより、家の彩りという印象なので好感を持たれやすいと思います。
あくまでエクステリアとして、さりげなく目隠しを採り入れるにはとても良い方法なのではないでしょうか。
まとめ
このように、目隠し対策としてはいろいろなものがあります。
ただし、高さ2m以上のすき間のないフェンスを隣家との境界に立てるなどは、明らかにやりすぎです。
いかにも人目をシャットアウトしているという雰囲気の目隠し対策は、場合によっては神経質な人と見られ、良くない印象を持たれてしまうこともあります。周囲の家からも、隣人同士不仲だと見られるかもしれませんし、実際にそれで不仲になった例もあります。
だからと言って何も対策をしないと非常識な人だと見られたり、先に建ててある方が対策をしてしまったりして、気まずくなってしまうこともあります。ある意味とても難しい問題なのです。
人がいることが分かっても、目線は合わない程度、気づいていないとごまかせる程度の目隠し、それで十分です。目隠し対策は「自分のプライバシー保護」と考えるより、隣人や通行人への「配慮」と考え、やりすぎず、ほどほどに、さりげなく、というのが無難でしょう。