新築外構工事の費用相場は100~200万円が最多価格帯だと言われています。もちろん、広さや高さによって一概には言えませんが、建物工事価格の1割ほどを予算の目安にするといいでしょう。
ただし、同じ敷地でも、依頼先やプランによって価格は大幅に変わってきます。全く同じプランでも依頼先が違えば、50万円以上違うこともあります。そして、もちろん同じ依頼先でも、使う素材によって100万円以上変わってくることもあります。こだわればこだわるほど、費用はいくらでも増えていくということです。
しかし、たいていの人には「予算」というものがあります。こだわりたいのは山々ですが、予算がある以上、どこかで妥協する場面も出てくると思います。
このページでは、できるだけ予算を超えずに、適正価格、かつ理想的なエクステリアに近づける方法をご紹介したいと思います。
目次
1.新築外構工事の相場と予算の立て方
新築の場合、建物施工業者の見積書から住宅ローン借入額の決定などの資金計画を行います。その際に、外構工事費用としての予算を計上してもらえば、その額も住宅ローン借入額に含めることができます。
しかし、一般的には「外構予算分を自己資金から差し引く方法」のほうが多いでしょう。つまり自己資金が800万円で、外構予算が200万円だとしたら、金融機関には「自己資金は600万円出す」ということにしておく方法です。この方法ならば、見積書に外構費用が含まれていなくても、外構予算を確保できます。
この項では、新築外構工事の相場と予算の立て方についてご説明します。適正価格でのエクステリアを実現するためには、相場を把握しておくのはとても重要です。相場を知ることで、価格に見合わないクオリティの外構工事を防げるだけでなく、外構工事の段階で資金不足に気づくという致命的な失敗も防ぐことができるでしょう。
1-1 建物価格の1割が相場
通常、外構工事の予算は建物価格の1割程度、つまり2,000万円の建築費なら、外構工事費用は200万円までに収まると考えられています。
しかし、やはり敷地の条件によっては予算をオーバーすることもあるので、実際に見積を出してもらわないことにはハッキリとは分かりません。
一般的な住宅ローン契約と建物施工の流れは以下の図のようになります。
実際に融資を受けるための契約は引き渡しが迫ったころ、つまり融資の直前です。
しかし、通常は着工前に本審査まで行って、必ず希望の借入額を融資してくれる金融機関を確保しておく必要があります。なぜなら、事前審査に通っても、本審査に通らないことが稀にあるからです。必ず支払える保証がなければ、建築施工者は着工してくれません。本融資前に、他の金融機関と比較し再検討する人も中にはあるようですが、着工前に融資先と融資額を決定しておく人が多数派です。
そのため、外構工事の予算を早い段階で正確に把握しておくことは大変重要なのです。
1-2 ハウスメーカーの当初予算は少なく見積もっている
諸費用を含めた総予算が分からないと、資金計画を立てることができません。そのためハウスメーカーの場合、登記のための費用などはもちろん、外構や照明、カーテンなどの予算を当初の見積書に計上されることがあります。
しかし、その予算は「最低限のもの」であることがほとんどです。登記などにかかる費用については正確、または多めの額で設定されていますが、照明やカーテン、外構については少なめの設定です。
これは、総予算を少なく見せて、競合他社に勝つ狙いがあると思われます。「外構予算に50万円と書かれているからそれで大丈夫」だと思っていたら、実際にはコンクリートのアプローチと機能門柱(ポストや照明・表札が一体化された門柱)だけの簡単な外構だったということもあります。家の契約さえしてもらえば、外構での儲けは「あわよくば」という考えなのかもしれません。
ハウスメーカーの当初予算を鵜呑みにして資金計画を立ててはいけません。あとで後悔しないためにも、「最低限」でなく「希望のエクステリアを施工するにはどのくらいの費用が必要か」を住宅ローン審査の前に把握しておくことが必要です。
1-3 相見積もりをして相場を把握する
では具体的に相場を把握するには、どうすればいいのでしょうか。
建物価格の1割程度が相場だと前述しましたが、これは敷地条件により異なってきます。また、どういうエクステリアを求めているのかによっても価格差が生じるので、早い段階で外構プランをある程度立てておくことは重要でしょう。
そして、相場を把握するうえで、もっとも有効な方法は、複数社に見積してもらう(相見積もりを取る)ことです。ハウスメーカーや工務店などの建物施工業者からはもちろん、他の業者(2社以上)にも見積を依頼して比較しましょう。少なくとも外構専門業者2社以上の詳細な見積書を見れば、その工事の適正価格をつかむことができると思います。
価格とクオリティが見合わない工事を避けるためにも、相見積もりは必ず行いましょう。
2.費用が上がる要因
外構工事費用が建物価格の1割までのことが多いとはいえ、すべてのケースにそれが当てはまるわけではありません。条件によっては、1割以上の高額費用を要する場合もあります。
この項では、外構予算を立てる上で多めに見積もらなければならない条件の土地についてご紹介します。下記の条件に当てはまる場合は、初期段階で余裕を持った予算を立てて計画を狂わせないようにしましょう。
2-1.高低差がある土地
前面道路との高低差があるほど、外構費用は多くかかります。まず敷地入り口から玄関までのアプローチは、階段やスロープなどが長く必要です。一般的には、2mの高低差なら200万円ほどの費用は覚悟しておいたほうがいいでしょう。
そして、コンクリート擁壁なども作る場合、総額500万円以上かかることもあります。もちろん、擁壁ではなく土地を斜面にして芝を張る方法で土留め対策をし、擁壁を作らないという方法なら予算を削減できます。ただ、考えようによっては庭にもできない無駄なスペースを作るということにもなってしまいます。
スペースを広く取るためには、外構に費用を上乗せさせなくてはならず、費用を安く上げるためには、芝や植物を植えるだけの、飾りのようなスペースを多く作ることになるので難しいのです。
また、玄関までの階段などが整備されていないと生活しづらいため、引っ越してからゆっくり外構工事を行うということが難しくなります。早めにきちんとした見積を取り、予算を立てておくことをおすすめします。
2-2 角地など、敷地の2辺以上が道路に面している土地
角地や道路に挟まれた土地など、敷地の2辺以上が道路に面している土地は外構費用が多く必要です。
なぜなら、道路から敷地への乗り入れなどの対策として、塀やフェンスなどで囲う箇所が多く必要になるからです。さらに、人目にさらされる箇所が多いぶん、その素材もランクアップしたほうが見映えが良くなるので、必然的に費用がかさみます。アルミメッシュフェンスから、樹脂製のフェンスなどにすると、材料費が4倍近くアップすることもあります。
また、陽当たりが良いので、そこに庭や大きな窓などを作ることが多いです。そのためプライバシー対策として、大きめの目隠しフェンスなどを必要とする人も多いのです。
両隣に家がある敷地より、2~3割ほど多めの予算が必要なことも予測されますので、早めにしっかりとした見積を取っておいたほうがいいでしょう。
3.業者ごとの費用の違い
同じクオリティでも、価格がまったく違ってくる原因としては、業者利益が考えられます。
外構工事は専門業者でも、下請け業者があることがほとんどです。ハウスメーカーや工務店の場合だと、さらに外構業者が下請けとなり、孫請け業者なども存在するということです。当然それぞれに利益がなくては商売にならないので、間に介在する業者が多いほど費用は増してしまいます。
この項では、依頼先ごとの外構工事費用の違いについてご説明します。費用面だけでなく、保証面など考慮して、何を優先させたいのかを考えながら検討するヒントにしていただければと思います。
3-1 ハウスメーカー・工務店の場合
一般的に、外構工事はハウスメーカー経由で行うのがもっとも高額だと言われています。3~4割ほどの利益が乗せられることが多く、実際の仕上がりが値段に見合っていないと感じる人が多いようです。工務店はハウスメーカーほどの利益は乗せられないようですが、やはり中間に業者が介在するぶん通常の外構専門業者に直接依頼するより高くなります。
ただ、メーカーによっては外構で儲ける気がないことも多く、下請け業者を直接紹介するという形を取る場合もあります。それでも多少の手数料は取られることが多いため、割高にはなるでしょう。
メリットは、外構工事によって、建物に接する部分に関しての保証が外されるリスクがなくなることです。また、建物引き渡しと同時に外構を完成させ、支払いを住宅ローン融資時に一度に行えるというのも大きな利点です。
しかし、費用とクオリティのバランスが取れておらず、たとえば100万円相当の外構でも、150万円などの高額費用がかかることが多いです。そのため、保証や支払いがシンプルであるということ以外は、デメリットが大きいと言えるでしょう。
3-2 外構専門業者の場合
費用に見合ったクオリティを求めるなら、もっともおススメなのは外構専門業者への依頼です。
プランニングを行い、下請けに工事を依頼する業者もあれば、デザインから施工まで自社で行う業者もあります。当然、後者はかなり安くなりますが、完全自社施工の場合、熟練した職人を確保できないことも多く、仕上がりが雑になるケースも多いようです。
土木・左官・植栽など専門の業者が下請けとして存在していることが多いですが、ハウスメーカーのように、丸投げで高い利益を得るわけではないので、プランニングにも満足することが多いうえに、かなり費用も安くなります。できれば、3社ほどの外構専門業者から見積を取り、比較検討してみましょう。これは相場を把握するにおいても重要です。
3-3 ホームセンターの場合
ホームセンターは、市販されている材料を買い、別途施工費を支払うことになります。
市販されているものなので、外構専門業者の仕入れ値よりは高く、施工もホームセンターが下請け業者に外注することになります。そのため、工事費用は高めに設定されていることがほとんどです。費用面、保証面の両方から考えても、メリットよりデメリットのほうが目立ちます。外構専門業者に直接依頼するか、あるいは高くてもハウスメーカーで保証を確保するほうがいいのではないでしょうか。
4.費用を抑えて理想に近づけるには
新築外構工事の「保証面」や「支払い面」をシンプルにするには、ハウスメーカーや工務店など、建物施工業者を通じて外構工事を依頼することが一番です。
適正価格で外構工事を行うには、複数の外構専門業者で相見積もりすることが有効です。
どこで依頼するにしても、なるべく予算の範囲内で理想のエクステリアに近づけたいものです。そのためには、まず予算だけで考えるのではなく、どうしたいかということを明確にしてみましょう。
この項では、確実に予算内に収めることにこだわるあまり、残念なプランしか引き出せないという失敗を防ぐための方法をご紹介します。
4-1 希望を盛り込んで引き算していく
プランニングを依頼する際に、たいていは予算を伝えますが、ハウスメーカーの当初予算のままでプランを出してもらうと、本当に味気ない最低限のプランであることが多いです。
たとえば高低差がある土地だとします。外構予算が当初100万円だったので、その予算でプランを依頼すると、冗談でなく、以下のようなプランが出てくることが多いのです。
- コンクリートの直線階段
- その周りは芝を張ったのり面(斜面)
- 照明・ポスト・表札が一体化したポール状の機能門柱
このような本当に最低限の、まるで仮設のようなエクステリアプランが出てくることがあるのです。これは、想像以上に落胆します。
素材がコンクリート仕上げだという見た目だけの問題ではありません。高低差が大きいなら、階段は直線ではなく、L字型などにして踊り場を設けるほうが安全です。デザインだけでなく機能面でも最低限のプランニングであることも多いのです。
このような残念な思いをしないためにも、まず「ここは譲れない」というポイントを明確にし、見積前に伝えておきましょう。そして、見積をしてもらって、予算オーバーなら削っていく方式がおススメです。
たとえば、階段は絶対にL字型にして、できればタイル張りなど見映えを良くしたいとします。これをどう伝えるかによって出てくるプランに違いが生じるかもしれません。
「絶対に予算を超えないでほしい」と言い張ると、「その予算ではL字階段はコンクリート仕上げしかできません」と味気ないプランが出てくるかもしれません。「できれば予算内にしたいが、見映え良くしたい」と希望を言っておくと、「予算は少し超えますが、洗い出しコンクリートならできます」など、寄り添ったプランが出される可能性が高いです。
いずれにしても、絶対に譲れないポイントと、できればこうしたいという希望を伝えておくことで、両者の折り合いがつくこともあるのです。
そのため、頑なに予算内にこだわるのではなく、なるべく希望を盛り込んでプランニングしてもらうのが実は理想のエクステリアに近づくポイントです。もちろん、こだわりすぎると予算を超えすぎてしまうのでそこは慎重になりましょう。予算を大きく上回るときは、素材のランクを落とすなどの対策をしたいとあらかじめ伝えておけば、対応をしてもらえることが多いでしょう。
4-2.将来グレードアップしたりDIYで対応したりすることも検討する
希望をすべて通そうとすると予算を大きく超えてしまうので、本当は乱石貼りのアプローチにしたいけれど、結果的にシンプルなコンクリートのアプローチにしたとします。
しかし、コンクリートなどシンプルな形で下地ができていれば、将来、金銭的な余裕が出来てから、何も撤去することなく乱石を貼るだけなどでグレードアップすることもできます。また、思い切ってDIYに挑戦してみるのもいいかもしれません。
たとえば「直線階段をL字型にすること」などは大きなリフォームが必要ですが、下地となるプランの希望を明確に通しておけば、素材のグレードアップなどは、将来希望どおりに叶える余地が生まれます。
いつか理想のエクステリアを叶えるために、とりあえずシンプルなコンクリート仕上げなど「撤去の必要がない状態」にしておくということも一手です。あえて妥協して希望でない仕上がりにするより、下地だけはしっかりと希望通りにして次の対策が取りやすくなれば、それは「失敗」ではありません。いつか夢のエクステリアを叶えるという目標にもつながるいい方法だと言えるでしょう。
まとめ
このように、予算内で新築外構を理想に近づけるためには、次のことが重要です。
- 建築施工者の予算を鵜呑みにせず、早い段階で希望の外構を作るための予算を知ること
- 工事費用の相場を把握し、適正価格を知ること
- 保証面・プランニング力・費用などの優先順位を決め希望を満たす業者を選ぶこと
- 予算だけでなく譲れないポイントを伝えプランニングしてもらうこと
- 妥協できない場合は将来的な余地を作ること
新築の場合、どうしても家づくりに意識をかたむけがちですが、外構と家のバランスが取れていないと、第一印象が残念な家になってしまうことになるかもしれません。予算にこだわりすぎて貧相なエクステリアになることは避けたいですが、予算を無視するのも危険です。
そのためには、外せない希望を明確にしたうえで、なるべく希望に寄り添ってくれる施工業者を慎重に探すことがもっとも重要なのではないでしょうか。そして、もし新築の段階では希望が叶えられなくても、将来ちょっとした手間で改善できる余地を残しておけば、それはいつか理想を叶えるためのステップになるかもしれません。