芝の外構工事をする場合、天然芝にするか人工芝にするかで費用がかなり変わってきます。
敷地のどこに芝を張るのか、芝を張った庭で何をしたいのか、といった芝生を張る目的によってどちらがよいのかもまた変わってきます。
また、天然芝の場合もちろんこまめな水やりや雑草の処理、芝刈りなどの手入れが必要になるため、手入れの時間が確保できるかどうかで天然にするか人工にするかも左右されます。
人工芝の場合経年劣化による張替も必要なので、長い目で見てもかなり費用が掛かるため、それぐらいのお金を庭の工事につぎ込んでもいいのかという考えも出てきます。
手入れに時間をかけるか、費用を抑えるかという観点でまず天然にするか人工にするかが変わってくるといえます。
このページでは、それぞれの芝の外構工事の費用や必要な工程、そしてその判断基準となる芝工事や天然芝・人工芝のメリット・デメリットを明確にし、目的に合わせた庭を造る方法を解説します。
目次
1 芝生を敷く工事内容と値段
芝生を敷くと決めた場合、まずはその土地やスペースが、工事ができるかが重要です。その土地の土の水はけが悪かったり、日当たりが悪かったりすると天然芝を張るには向いていません。
また、逆にマンションなどの集合住宅で、庭はないけど緑が欲しいという場合にはベランダのテラスに人工芝を敷くことができ、その場合は下地の工事等はいらないため芝生代しかかからないことになります。
芝を敷くと言ってもどのような工事の過程を経るか、どのような芝を使用するかによって工事内容や値段は大きく変わってきます。
1-1 必要な材料の値段と施工費(平米単価:1㎡)
芝生を敷くための外構工事では、どのくらいの費用が掛かるのかを説明していきます。
天然芝と人工芝どちらを選ぶかだけでなく、その中でどの芝を選ぶのかまた、土地自体がもともと綺麗ですぐに芝が張れるかそれとも工事が必要か、ということによって金額は変わってきます。
芝生1㎡を敷くにあたって必要な材料は、芝生約10枚、砂2袋弱、培養土1袋、芝の目土1袋、といったところです。
また、芝生の間から雑草が生えてくるのを未然に防いでくれる防草シートもあるので、そういったものを使用すると後の手入れが楽になります。
まず、相場は1㎡あたり天然芝だと約3.500円位、人工芝だと約12.000円~18.000円程度です。
この金額は、あくまでも平均相場のため、実際の金額は工事の場所や環境によって変動します。
天然芝には、日本芝と西洋芝があり、それぞれの性質だけでなく、適合する環境も異なってきます。
日本芝は、もともとの土地が綺麗ですぐに芝を張れる場合は、1㎡あたり約2,000円です。
しかし、土地が平らでなく、小石などが転がっていたりして今ある芝を剥がし、新しく付け替える必要がある場合は1㎡あたり約4,000円かかります。
つまり、土地をきれいにする工事に芝苗代と同じ費用がかかるのです。
西洋芝のほうは、すぐ張れる場合は1㎡あたり約3.800円、工事が必要な場合は約7,000円といった具合です。
基本的に西洋芝の方が単価が高く、手入れも手間がかかるのですが、冬でも変色しない種類の芝もあり、天然のもので色が変わらない芝を探している場合にはオススメです。
日本芝は日本の気候に即した芝で、日本の家庭で育てやすい芝です。
ノシバ、コウライシバ、ヒメコウライシバなどがあります。この日本芝の長所は、踏まれても丈夫で少ない肥料でも育つところです。
逆に、短所としては、種で増やすことができず、また、季節によって芝の色が変わるところがあります。
暖かい季節は青いのですが、寒くなると枯葉色になり、また春がやってくると青々とした色に戻ります。変色については、それを自然の変化として楽しみたい人にはいいかもしれません。
西洋芝には、寒さに強く、東日本の気候に適したものだとベントグラス類、ブルーグラス類があります。こちらの西洋芝だと冬でも色が変わりません。
また、高温・乾燥に強く、西日本の気候に適したものとしてはダグラス類、ティフトン類などがあります。これらの長所は種で増やすことができるところです。
また、環境も日当たり良好でなくても半日陰でも育ちます。
短所としては、日本のものでないため、高温多湿や乾燥に弱いところが挙げられます。
日本芝と比べると多量の肥料が必要になり、伸びも早く、芝刈りが大変になってきます。
1-2 正しい工事(芝工事)
① 整地により下地を作っていく
まずは、芝生を張る場所を7㎝ほど掘ります。
ここでは、凹凸ができないよう、平らに均すようにして掘っていきます。
掘り終えたら防草シートを敷き、その上から水はけのよい砂や土を5㎝ほど、それから培養土を2㎝ほど敷いていきます。
この時、綺麗に整地ができていないと雨が降ったときに水が溜まってしまうので、整地の際に水はけのよい綺麗な下地を作っていく必要があります。
平らにならすようにして砂を敷いたら、スコップやレーキでさらに均していき、水を撒いて下地を固めます。
水を撒くことで砂が固まるだけでなく、この時に凹凸もさらに修正することができます。
均した後は、足で充分に踏んでさらに下地を固めていきます。
② 芝生を張っていく
芝生の張り方は、ベタ張り、目地張り、一条張り、市松張りがあります。
ベタ張りは隙間を開けずに芝を張っていくもので、芝苗を多く使いますが早いうちに完成します。
目地張りが一般的で、芝と芝の間を3~4㎝空けて張っていくもので、芝が成長すると目地の部分も埋まり、自然な仕上がりになります。
また、目地張りのほうが目地土から芝が栄養を補給することができます。
一条張りや市松張りは芝の量が少なくて済み、工事の初期費用自体は抑えられますが、生えそろうまでに時間がかかるため一般家庭向きではありません。
芝を張る際は、ベタ張りでも1~2㎝ほど離して敷き詰めていきます。隙間なく埋めるのではなく若干離すことで水が下の土に浸透しやすくなります。
敷き終えたら目土を芝の上から撒いていきますが、厚さ1㎝の芝生約1㎡につき1袋使用します。これを撒くことで、芝が綺麗に育ちます。
その後、箒等を使って目土を芝全体にいきわたらせます。芝生の表面だけでなく、目土にもなじませます。その上から板を敷き、足で踏み固めます。
③ 散水をしていく
芝を踏み固めたら、散水でたくさん水を与えます。
1-3 工事の注意点(芝工事)、手抜き工事の可能性
下地を作る際、一番下に敷く防草シートの貼り付けに不備があると芝の下から雑草が生えてきてしまいます。
ここの施工に問題があると雑草の処理も芝の敷き直しも大変になってくるので、外構業者に任せるときは丁寧に敷かれているか確認しましょう。
また、雨が降った際、芝生に水たまりができることがあります。これは、芝を敷く前の下地に問題があり、しっかりと下地を均していないためです。
芝の下の砂と土の二層構造の部分をしっかりと踏み固めることで凹凸ができにくくなり、水たまりができるのも防いでくれます。
または、あらかじめ水勾配をつけて下地を斜めに作っていけば水が流れていき、水たまりができにくくなります。
そして芝生を張っていく順番ですが、芝生は張り終わりが近づくとそのままのサイズでは合わず、カットしてサイズを調整していくことになりますが、家の周辺を最後のほうにやるとカットされてまばらな大きさになった芝生が目に付くようになってしまいます。少し格好悪くなってしまうので、家の周辺など目立つところを最初に張っていき、庭の隅など目立たないところを最後に張るようにしていくと、きれいに仕上がります。
2 芝生にする際のメリットとデメリット
土がむき出しになっている状態や砂利が敷かれている状態から芝生に変えると、当然緑が生まれます。
そこに癒しやリラックス効果、さらには天然芝ならバーベキューまで楽しめ夢が膨らみますが、植物である以上害虫が発生し、マメな手入れも必要です。
人工芝であれば工事をしてからの問題といったものは天然芝ほどありませんが、初期費用が高額なうえ、天然芝より短い期間で張替も必要になってきます。
それぞれのメリットとデメリットを比較すると自分たちができそうなこと、やれそうな工事が明確になってきます。
2-1 芝生のメリット
芝生を庭に敷く一番のメリットは、やはり美しい景観が生まれること、緑が得られることでしょう。
芝の外構工事は比較的費用が安く、天然芝なら数万円あったらちょっとしたスペースに芝が張れます。
庭一面に張るとしても、一般家庭なら10万円前後で工事をすることができます。
また、土がむき出しになっているよりも、芝生を張ったほうが砂埃も舞わず、洗濯物を干しても汚れが付きにくくなります。
天然芝の場合、庭でバーベキューも楽しめます。肌触りが良く、子供や犬が庭で遊びやすくなりますし、砂利と違ってクッション性があるため転んでも安全です。
丁寧に手入れをすれば何十年も持ち、全体的に人工芝を敷くよりも安い費用で工事ができます。また、庭に敷くことで芝生の葉の蒸散作用により気温の上昇も抑えられ、涼しく感じられます。
人工芝の場合は日当たりが悪くても芝を張れるため、集合住宅のベランダに敷くこともできます。
人工芝は植物が育つ環境を整備するのが難しい都会でもこのように取り入れることができ、手軽に緑を楽しめます。
何より手入れがいらず、またゴルフ場など一年中グリーンの芝が必要な環境には最適です。
最近の人工芝は改良が進み、天然のように見える芝も販売されています。
芝が倒れることで光を反射し、ビニール特有の光沢が出てしまうのですが、改良によって倒れにくくなり、ビニールに見えない工夫がされているものもあります。
また、毛足が短いものなど長さを選ぶことができるのも人工芝ならではのメリットです。毛足が短いものにすればゴミもとりやすくなります。逆に、毛足の長いものだとクッション性に優れているので、転倒時も安心です。
2-2 芝生のデメリット
芝生は、天然のものでも人工のものでもゴミが絡まりやすい性質があります。
天然芝だと、何より手入れを頻繁に行う必要があり、さらに防虫対策などもしなければ芝が枯れてしまいます。
芝を刈るだけでなく、肥料も与え、雑草もマメに処理しなければなりません。
これに加え、水をやりすぎたり大雨が降ったりすると土が流出してしまうこともあります。
また、芝生を張る面積が大きければ大きいほど手入れが大変になってきます。
日当たりも良好なところでないと健康に育ちません。冬になると葉が枯れるため、景観が変わってしまいますが、そこもよく考えて天然のものにするか人工のものにするか決める必要があります。
また、工事を秋冬にやることは適していません。秋から冬にかけてだと芝が休眠に入るので根が付きにくくなるからです。
芝刈りをしていると2年目以降からサッチが溜まります。
サッチとは、芝生を刈ったときのカスや冬枯れした葉などが芝生に堆積したものです。
芝生の葉はリグニンやセルロースなど、繊維質を多く含んだものであるため、そのまま放置しておいても分解されにくく、地中ではなく、表層に堆積していきます。
サッチは乾燥した状態だと水をはじくため散水しても土に水分が十分にいきわたらなくなってしまいます。
このように、サッチは堆積すると芝の水はけを悪くします。
しかし、大量の雨が降ると今度は水を含み、そこに病原菌が繁殖していくのです。
具体的には、藻や苔が生えたりします。通気性が衰えると土壌や表層の微生物の働きが弱まり、特定の病原菌が繁殖しやすくなり、さらにサッチの分解が遅れる、という悪循環に陥ります。
そのため、これも除去する必要があり、サッチを完全に取り除くのは難しいのですが、できる限り定期的に取り除いていく必要があります。
このサッチを取り除く作業をサッチングといいます。
サッチングは熊手やレーキで掻き出して行います。サッチを掻き出したのち、軽く目土を撒くと良いでしょう。
そしてエアレーションをすると土の中で効率よくサッチが分解されます。
ただし目土を入れすぎるとグランドレベルが上がってしまうので様子を見ながらやっていきましょう。
人工芝は基本的に手入れはいりませんが、何より工事の際の費用が人工芝と比較するとはるかにかかります。
踏むことにより徐々に草が寝ていってしまうため、細かい石を撒いて芝を起こす作業が必要です。
人工芝は日焼けもします。
さらに、合成樹脂やポリエチレンでできているため夏場は高温になり、子どもやペットを近づけられなくなります。裸足で歩くのも危険です。
また、性質上火気厳禁なのでバーベキューなど火を使ったことが庭でできなくなります。
2-3 安すぎる工事の危険性
あまりにも安い金額で工事の費用を提示してくる業者は、整地の段階で手を抜いてくることがあります。
最初に土を掘った後に防草シートをしっかりと貼り付けて居なかったりします。
工事が終わり、雑草が大量に生えてきてからでは雑草の処理に追われるか芝生を剥がして土を掘り、防草シートを一から張りなおすかしないといけなくなり、後からの対応がかなり大変になってきてしまいます。
また、下地を踏み固めるなど繰り返しの作業が必要になる工程でも手を抜いてきます。
ここで手を抜かれると表面に凹凸ができてしまい、水がたまったりしてしまいます。
芝生の間隔を空けすぎて芝生代を抑えられても、雨の際に土が流出しやすくなってしまいます。
芝生の工事は何か問題が発生した場合、工事の初期段階で手を抜かれていることが多く、そのためやり直しが大変になります。
芝生を張る面積が大きいとそれなりに工事費もかかってきて当然なのです。
安いからといってすぐに工事を依頼する外構業者を決めず、芝生にかかる費用や、芝生を張る土地をきれいにする工事にいくら費用がかかるのか、よく理解し、工事を検討する必要があります。
まとめ
芝生があり、緑のある家庭は、やはり外観が魅力的でしょう。
温かさや癒しが感じられ、住んでいる人も実際に「芝生にしてよかった」と思える場面が多々あるはずです。
ただ、天然の場合生き物である以上入念な手入れが必要で、それには責任を持たないといけません。
しかしきちんと手入れを行えばそれに応えてくれるかのように、人工芝より長持ちしますし、そんな家に住めば住むほど庭にも愛着が湧いてくるはずです。
人工芝はテラスに敷くにはうってつけで、ウッドテーブルやイスなども置けば、テラスで過ごす時間にプラスアルファの癒しを与えてくれるでしょう。
費用こそ掛かるものの手間はかからず土に根を張る必要もないため、忙しい都会生活を送っている人に癒しを与えてくれる存在として最適かもしれません。
いずれにせよ、愛着の湧く庭になることは間違いありません。手間暇をかけ、こだわりをもって施工することで、値段以上の空間が得られるはずです。