私たちが普段何気なく生活しているなかで、いたるところに構造物があります。
構造物とは、ビルやトンネル、あるいは私たちの住まい(一軒家やマンション)のことを指します。
近年の建物は耐震補強に力を入れているので、多少の地震がきても崩壊するようなことはありません。
また、ビルやトンネル、あるいは橋などの大きな構造物は国が管理をしています。
国民の命を守るために、想定できる自然災害に十分対応した設計で作られています。
しかし、強度をそれほど必要としない構造物は、「手抜き工事」をされている場合が非常に多いです。
強度をそれほど必要としない構造物とは、建物の外構工事や民間工事(公共事業以外)のことを指します。
見た目はきれいに作り上げられているのですが、実は仕上がりだけをきれいにしている場合がほとんどです。
手抜き工事を行う最大の理由は「十分な工事予算がない」からです。
十分な工事予算がないと、行わなければいけない工程を省かなければならなくなり、粗悪な構造物ができてしまいます。
そこで、最後にきれいに仕上げることで「良い構造物ができた」と錯覚させるのです。
つまり、見栄えの良い外観の構造物でも、手抜き工事をしているためにすぐにボロボロになってしまう可能性が非常に高いということです。
見栄えだけをよくする手抜き工事の例をいくつか挙げていきます。
目次
1.基礎工事の種類とは
建物の基礎工事は大きく「ベタ基礎」「布基礎」「杭基礎」「独立基礎」の4種類に分けることができます。ここでは、それぞれの種類の概要や特徴について解説します。
1-1.ベタ基礎
ベタ基礎とは、地盤全体に鉄筋コンクリートを入れる、耐震性が高いタイプの基礎です。
大きな面で建物を支えるので強度が高く、阪神淡路大震災の後はベタ基礎が広く使われるようになりました。
1-2.杭基礎
杭基礎とは、地盤に杭を打ち込む方法で設けられる基礎のことです。
支持杭と摩擦杭の2種類があり、弱い地盤に対してよく使われます。
支持杭は長い杭を地盤深くまで打ち込むもので、摩擦杭は凸凹状の杭を使って地面との摩擦で支えるものです。
1-3.布基礎
布基礎とは、逆T字型の鉄筋コンクリートを使う基礎のことです。
ベタ基礎のように面ではなく、立ち上がり部分の線で建物を支えます。
1-4.独立基礎
独立基礎とは、主要な柱部分にのみ基礎をつくる方法です。
主に地盤が強い土地で使われ、布基礎以上に小さい接地面積で建物を支えるのが特徴です。
2.基礎工事の一般的な流れ
ここからは、基礎工事の一般的な流れを順を追って紹介します。
基礎工事で最初に行う作業が地縄張りです。ビニールひもや縄などを施工する土地の上に張り、住宅の位置を確認します。建物を正確な広さで建てるために欠かせない作業です。
次の工程が遣り方で、木の杭などを打って図面に書かれた情報を土地の上に写していきます。
続いて行うのが、基礎のために地盤を掘り起こす掘削工事です。
次に砕石を敷いて地盤を固め、捨てコンクリートを流し込みます。
続いて、図面に従って鉄筋を組み立てていくのが配筋と呼ばれる工程です。配筋は建築基準法でも細かく規定が設けられており、建物の強度を決定づける作業です。
次に、型枠を組んでアンカーボルトを設置したら、コンクリートを流し込んで数日放置します。
最後に、コンクリートが固まったら型枠を外し、アンカーボルトのずれやひび割れの有無などを確認します。
基礎工事は、基本的にこのような流れで行われているのです。
3.左官屋さんによる上塗りで見た目だけきれいなコンクリート
コンクリート構造物(ビルや駐車場のコンクリートなど)の工事を行う際は、「専門知識」と「職人の技術」がなければコンクリート本来の強度を生み出すことができません。
コンクリートは決められた打設方法を行わなければ、バラス(砂利)とモルタル(ペースト状のコンクリート)に分離してしまい、仕上がりは右の写真のように偏ったコンクリートになってしまいます。
また、写真の赤で囲んである「砂利が浮き出ている部分」のことをジャンカと呼びます。
出来上がったコンクリートにジャンカが発生してしまうと、見た目が悪いだけでなくコンクリートの強度はほとんどなくなります。
本来なら取り壊しを行い、新しく作り上げなければいけないのですが「工期(決められた工事期間)」と「現場予算」の都合でできないため、モルタルを上塗りして見栄えをよくしてごまかしています。
モルタルを上塗りする作業のことを「補修作業」と呼びます。
補修作業は現場で当たり前のように行われています。
また、補修作業を行う理由は、素人さんが構造物の良い悪いを見た目で判断するため、仕上がりだけきれいなら良いとされているからです。
補修作業は左官屋さん(壁塗りをする職人)が行います。
左官屋さんの仕事は、補修作業だけでなく、ブロックを積んだりタイルを貼ったり、またはモルタルなどで壁をきれいに塗り上げていく作業などです。
ただ、左官屋さんが壁を塗るからといって、手抜き工事を隠ぺいしているとは限りません。
壁を塗り上げることで、見た目がきれいになる上に建物とマッチした外観を作り上げることができるからです。
ここで重要なのは、「左官屋さんがモルタルを塗り上げる前にコンクリートの表面を確認する」ということです。
モルタルを塗り終わってからではコンクリートの表面を確認することができません。
手抜き工事を見抜くために、必ずコンクリートの出来栄えを確認するようにしてください。
また、右の写真のように補修作業を行わないコンクリート構造物もあります。
このようなコンクリート構造物を「打ち放し(打ちっぱなし)コンクリート」といいます。
打ち放しコンクリートはクールな印象を与え、シンプルな外構に適しています。
打ち放しコンクリートの場合、補修作業を行うことができないため、コンクリート打設は一発勝負です。
それがそのまま表面に現れるので、職人の腕が試されます。
腕の悪い職人が施工した打ち放しコンクリートは見栄えが悪くなってしまいます。
4.基礎工事の失敗を防ぐチェックポイント
基礎工事の失敗を防ぐためには、チェックするべきポイントを押さえておくことが大切です。
1つ目のチェックポイントとして、配筋が適切かどうかということが挙げられます。
先述のとおり、配筋は建物の強度を大きく左右する重要な作業です。設計どおりの強度を建物が得るためには、適切な方法で配筋が行われている必要があります。
鉄筋のゆがみや曲がりをそのままにしてコンクリートが流し込まれることもあるため、配筋を終えた段階で状態を確かめにいくとよいです。
次に、地縄張りが適切に行われているかどうかも大切なチェックポイントです。
建物の工事は地縄張りをもとに進められるため、間違っていると大きな施工ミスにつながります。建物の方位や配置が設計どおりになっているか、地縄張りが完了したら確認しましょう。
最後のチェックポイントは、型枠工事におけるかぶり厚が適切かという点です。
かぶり厚が足りないと鉄筋も傷みやすくなるため、コンクリートの中性化速度なども考慮しながらチェックしてください。
まとめ
コンクリートに限らず、手抜き工事をして最後の仕上げで、ごまかしを行っている業者が非常に多いです。
ただ、その中にもきちんとした仕事をしてお客様のことを第一に考えている業者はいます。
工事で「ごまかし」を行わせないために、現場の進行状況をこまめに確認するようにしてください。
少し面倒くさいかもしれませんが、これを行うことによって構造物の品質が一気に向上します。
工事を業者にまかせっきりにしてしまうのはあまり良いことではありません。
品質と仕上がりに満足できる工事を行ってもらうために、職人さんと一緒になって現場を確認するなど、あなたも工事に参加するようにしましょう。
筆者:外構工事職人歴20年 石川公宣