弊社(石川デザイン企画)にお問い合わせをしてくださるお施主さま(工事の依頼主)から、よくされる相談があります。
それは、インターネット販売や、ホームセンターなどを利用して、「自分が気に入ったエクステリア商品(フェンスやポストなど)を購入して、外構業者に取り付けてもらいたい」という意見です。
実は、お施主様が製品を用意することを、「施主支給(せしゅしきゅう)」と呼び、実際に行われています。
施主支給を用いた工事では、施主自身が購入したエクステリア商品の発注や納入日の管理を行うことになります。
それゆえ、お施主さまが外構業者との間に入って工事を進めることとイコールです。
したがって、知識や判断の部分で現場監督同様の働きが求められます。
なぜなら、仮に商品に何かあったときは、お施主さま自身で何とかする必要があるからです。
たとえば、エクステリア商品の手配ミスによる、工期の延長や作業員の増員になった場合、お施主さま自身がその責任を負うことにも繋がります。
また、お施主さまが自分で建材を仕入れる以上、建材の納期や建材自体のことについても理解していなければなりません。
施工会社は自社商品を仕入れるわけではないため、商品によっては、細かな詳細がよくわからない場合があるからです。
つまり、あなたが施主支給を検討している場合、「あなた自身が工事全体を動かす」という、工事の中心となる覚悟が必要なのです。
このページでは、施主支給工事においてのメリットやデメリット、施工可能な商品、施工不可な商品を解説していきます。
これを学ぶことで、施工業者とトラブルを起こすことなく、有意義な施主支給工事が行えます。
目次
1.外構工事の施主支給とは?
冒頭でも少し触れたとおり、施主支給とは、お施主さまが自分の希望の建材を用意して、施工会社に取り付け工事を依頼するもののことを指します。
中には、自分で建材や工事のことをよく学び、工事に加わるということに意欲的な方もいらしゃいます。
一般人であるお施主さまが、外構業者というプロ集団に交じって工事を進めることになります。
また、施主支給の工事により、コストダウンを狙うことができる、ということで注目されています。
1-1. 施主支給のメリット
施主支給のメリットとしてはお施主さまが自分で好きな建材を用意するなどをして、お施主さま主体で外構工事ができることです。
そのため、希望の建材をそろえることで、オリジナルな工事を追及できます。
それに加え、お施主さま自身で工事を進められる部分が増えるため、DIY好きの方には理想的です。
また、施主支給では、施主が自分で建材を用意することにより、施工会社による工事の費用を抑えることができます。
ほとんどの場合、これを目的とする方が多いでしょう。
たとえば、現在、持っている建材を、そのまま使用したい場合や、安価に購入した建材を使って工事したい場合などは、うってつけであると言えます。
1-2. 施主支給のデメリット
メリットがある一方で、当然デメリットも存在します。
特に、施主支給で工事を進めるとなると、施主が工事の要員として加わることになります。
専門家の世界に足を踏み入れることになるため、工事の過程をしっかりと認識し、専門的な内容も憶える必要があります。
それに加え、建材の寸法や規格を把握するだけでは不十分です。
たとえば、以下のようなことも考慮する必要があります。
- いつ取り付けたらよいのか
- そのためには建材がいつ納品されるよう手配したらよいのか
- これらのことを計算して、建材の調達をしなければなりません。
そして、それを自分で把握さえしておけばいいわけではなく、漏れのないように、施工会社に伝える必要があります。
つまり、お施主さまも工事の要員の一人であるため、施工会社と綿密なコミュニケーションをとり、情報を共有する必要があるのです。
また、お施主さまが使用したいと希望する建材のすべてが、施工会社に工事を受け入れてもらえるわけではありません。
施工会社が自社で取り扱っている建材であれば、施工面で問題ありませんが、そうでない商品は断られる場合があるからです。
施主支給が認められた建材であっても、施工会社にとっては初めて見る、触る商品です。
それゆえ、自社の扱いなれた商品とは勝手が違うため、施工会社も少々扱いに戸惑います。
そのため、予想以上に施工時間がかかるなどのトラブルが発生する可能性もあるのです。
施主支給による工事を検討されている場合、時間に余裕をもって始めましょう。
つまり、スムーズに工事が進まない可能性を考慮しておく必要があります。
また、お施主さまが自力で建材を探し手配するとなると、全体的にかなりの手間がかかります。
施工会社には建材の独自の仕入れルートがあり、スムーズに仕入れを行うことができます。
しかし、施主自身で建材を用意するとなると、その建材の仕様や性質、取り扱い方などから勉強する必要があるのです。
また、使用する建材も、施工会社に断られる可能性を考えて一つに絞らず、いくつか候補を決めておいたほうが良いでしょう。
ちなみに、施主支給による工事がなされ、無事に外構工事が完了したらそれで終わりではありません。
なぜなら、実際に使い始めると、うまく機能しなかったり、すぐに壊れてしまったりすることがあるからです。
その不具合が使用開始時からみられた場合、建材自体にもともと欠陥があったのか、それとも工事の過程で破損したのかを見極める必要があります。
あるいは、正しく取り付けられなかったがゆえに機能していないのか、ということを見極めなければいけないのです。
建材自体の欠陥の場合、建材のメーカーや販売会社へ問い合わせをします。
一方、工事自体の問題が疑われる場合、施工会社への対応を求める、といった別個の対処が必要となります。
つまり、施主が工事に加わった以上は、すべての対応を施工会社に任せるというわけにはいかないのです。
そして、家の一部である外構工事ですが、お施主さま自ら用意した建材は、住宅ローンなどの保証の対象にはなりません。
建材の用意から工事までを、すべてハウスメーカーや工務店に任せるとなると、工事費用は、かなり高くなりますが、こういった保証や対応もついてくるということなのです。
施主支給ではそれがなくなり、責任や役目が細分化されるため、「困ったときは何でも施工会社へ」というわけにはいかなくなります。
そのため、施主支給では何かあったときに自分が主体で動くという覚悟が必要であると考えてください。
1-3. 施主支給できる建材
外構工事では、具体的にどのような建材を取り付けられるのでしょうか。
施主支給によって取り付けられるものとしては、以下のようなものが挙げられます。
・ポスト
・表札
・照明
・門扉
・フェンス
・物置
基本的に、小さくて簡単に取り付けられるものがオススメです。
ポストや表札は比較的小さな建材で、取り付けも簡単です。
また、配線等の問題もないため、施工会社も快く引き受けてくれます。
照明や門扉なども、取り付け自体、さほど苦労はしません。
ただし、工事完了後に、きちんと機能するかの確認が必要不可欠です。
しかし、フェンスやカーポート、物置は製品自体が大きいため、扱いに注意が必要です。
2.外構工事の施主支給を進めるための注意点
施主支給による工事では、お施主さまと施工会社間との間でトラブルがよく見られます。
施主支給をするにあたりお施主さまはただのお客さまではないからです。
何か不都合があった際には自分が主体となって臨機応変に対応をする必要があるからです。
すべてを、施工会社に任せる一般的な工事であれば、トラブル自体が起こりにくく、何かあっても施工会社が解決してくれます。
しかし、施主が自分で建材を用意するとなると、そうはいきません。
施工会社も通常時には、当然のごとくやってくれることも、そうではなくなるので注意しましょう。
この項だは、外構工事で施主支給を行う際の注意点を紹介させていただきます。
2-1.事前に外構業者に相談をする
施主支給のデメリットの部分で述べたように、施主支給による工事を検討する場合には、「その建材を施工会社が許可してくれるか」事前に相談することが必要不可欠になります。
せっかく気に入った建材を購入しても、この規格では取り付けられない場合があるからです。
たとえば、「海外仕様なので取り付けられない」といった場合など、規格や取り扱いの問題で施工会社に工事を拒否されてしまっては意味がありません。
それゆえ、サイズや、規格など、しっかり把握して施工会社に報告するようにしましょう。
2-2.納品ミスで、作業を中断しない
施主支給工事時に、お施主さまが、検討する建材の使用が施工会社に認められ、実際に購入する段階であっても、よくあるミスがあります。
たとえば、以下のようなパターンです。
- サイズや規格を間違えてしまう
- 置き場所に困るような大きな物なのに、納期を間違え早く到着してしまい、置き場所に困
- 建材の到着が遅れる
特に、建材の到着が遅れるとなると、工事がやり直しになったり、作業を中断したりすることになります。
このようなトラブルにならないように、建材の購入にあたり、納品の段階では正しいサイズや適正な規格のものを購入する必要があります。
そして、予定通りの時期に納品されるよう、しっかりと綿密な計画を立てておかなければなりません。
2-3.施主支給でのトラブル
施主支給では、工事予定や過程を途中で変更するのには、かなりのコストがかかるので注意が必要です。
たとえば、当初施工会社の建材を使用して工事をする予定だった方がいました。
しかし、工事や建材の説明等を聞いて、お施主さまが「施主支給でやれるのでは?」と、急きょ施主支給に変更するパターンです。
この場合、施工会社からしてみれば、当初出した概算よりも取り分が減ってしまうため、大変迷惑になります。
そもそも、施主支給自体に手間がかかるため、施工会社によっては断るところがほとんどです。
そのため、あとから施主支給に変更するなどもってのほかです。
また、施主と施工会社の信頼関係としても、「いろいろ勝手がわかったのでやっぱり自分で建材を調達する」というのは、施工会社に対して大変失礼です。
それに加え、途中から施工会社で仕入れている建材を使うことに変更するにしても、費用が変わるため、それで両者がもめることもあります。
また、施工会社も仕入れに時間を要するため、工事がやり直しになると工期の延長につながり、施工会社のスケジュールも狂わせられます。
施工会社にも次の工事の、仕事の予定があるのです。
また、商品の梱包材の処分についても、事前にしっかりと打ち合わせをしてください。
なぜなら、通常の工事だと施工会社が用意した建材の梱包材などの、建材から出るゴミはもちろん、施工会社が責任をもって処分するからです。
一方、施主支給の場合、施工会社にゴミの処分をする義務や責任はありません。
ただ、一般人であるお施主さまにとっては、そういった廃棄物等の処分は大変です。
処分の仕方もイマイチよくわからないため、処分にかかる費用を払って施工会社に頼んだほうが妥当といえます。
その金額に関しても、事前に打ち合わせで決めておかないと後々もめてしまいます。
このように、施主支給にすると、通常のリフォームや新築の場合ですらも相談や打ち合わせが多いのに、さらに相談事が増えてしまいます。
そして、納品時の建材の受け取りについても注意が必要です。
施主が自分で購入した商品というのは、たいてい路上や車上での受け渡しになるからです。
小さいものであれば施主がそのまま受け取り、持ち運べばいいのでしょう。
しかし、大きいものや扱いに注意が必要なものなどは、施工会社の協力が必要になります。
そもそも、施工会社に施主支給の商品の受け取りや、工事場所までの運搬の義務はありません。
したがって、依頼してやってもらうことになるため、こちらについても設置費用に上乗せするなどしたほうが得策でしょう。
とにかく施主支給では、施工会社にやる義務がないこともやってもらうことが多くなるため、「お願いする」という姿勢でいることが大事です。
そして、費用だけでなく受け取る場所についても、近所の迷惑などにならないように、事前の打ち合わせの時点でしっかりと決めておく必要があります。
また、販売会社やメーカーがきちんとしているかも重要です。
施工会社が通常仕入れる場合は決まったルートがあり、確固たる信頼関係があります。そこで通常通りに仕入れるので、安全・安心です。
しかし、施主がやるとなるとわけが違います。
商品購入後に欠陥等が見つかった場合、きちんと保証・対応してもらう必要があります。
そのため、そういったことをしてくれる会社なのか、購入前の判断がカギとなってきます。このことから、建材は販売元の対応がしっかりとしたものを購入しましょう。
複数組み合わせて発注する場合は、別々のメーカーのものを集めるよりは、同じメーカー内でそろえたほうがベターです。
海外製品は、規格や品質面での信憑性が問われるだけでなく、納品に時間がかかるため、国内製を選んだ方が得策です。
そして、購入場所についてですが、ネットやホームセンターなどで安く販売されているものには注意が必要です。
なぜなら、それらは型落ち品であったりするため仕様が古く、施工会社のほうも取り扱いに困る場合があります。
また、流通や搬送の際に雑に扱われてしまうこともあります。
建材に歪みや欠損が見られる場合もあるため、十分に注意しましょう。
3.外構工事で施主支給できない工事とは?
家の庭をなるべく安く新設工事やリフォーム工事がしたい、好きな建材を使って外構もカスタマイズしたい、というのが施主支給の目的だと思います。
施主支給では、工事が厄介になる部分もあります。
不測の事態に陥ると、かえって費用が大きくかさむことも多々あります。難しい部分については、やはりプロに任せるのが一番です。
どういった工事が施主支給に向かないのか、しっかり把握しておく必要があります。
そこでこの項では、施主支給に向いていない工事を解説していきます。
3-1.タイルやブロック、レンガなど大量に用意する必要のある物
ブロック・レンガ積みやタイル貼りなどを、施主支給によって行うのは正直オススメできません。
施工会社が通常自社で建材を仕入れて工事をする際は、「拾い出し」といって大量に「使用する建材の数を算出する」作業をします。
その代表格として、タイルやブロック、レンガなどがそうです。
この拾い出しの際、施工会社は不足分等も考慮して建材を発注します。
ただ、素人がこの工程を自分でやるとなると、やはり不足が生じてしまいます。
そしてこういった建材は、1枚ずつでの販売はされていません。
ロット(メーカーがコスト削減のため、販売最小個数を設けている)で販売しているため、コストダウンを狙った必要枚数ちょうどでの購入というのは不可能です。
また、工事の際に必要に合わせて建材をカットして大きさを調節する場合もあります。
このとき、建材が余分に必要となるため、当初お施主さまが算出した数量では足りなくなってしまいます。すぐさま発注を行ったとしても、当日に届くわけではありません。
こういったことが起こると、何度も述べている通り工期に遅れが生じ、費用がかさむことになるので最初からこういった工程は、施工会社に任せるのが得策でしょう。
3-2.大がかりな工事
1-3.でも書きましたが、施主支給がオススメできる工事というのは、小さくて取り付けが簡単なものや、竣工(しゅんこう:工事が終わり、完成すること)近くになって取り付けることができるものです。
逆を言えば、かなりの大きさや、量のものを取り付ける場合は、大がかりな工事が予想されます。
そのため、施工会社に任せたほうが得策といえます。
たとえば、テラスやウッドデッキなどは必要な資材も多く、搬送も大変です。
この場合、最初から施工会社のカタログを見て決めたほうが、工事がスムーズに進められます。
まとめ.
せっかく施主支給をするのならば、値段を抑えることだけではなく、「こだわりの建材を使った、こだわりの庭を造りたい!」という想いで始めていただければ幸いです。
当初はコストダウンしか目的になかったとしても、自分で建材やデザイン、工事の知識、流通の仕組みなどを知り、外構工事に詳しくなっていけば、これから造る、お庭にも愛着が湧いていくはず。
それはもう、手塩にかけて我が子を育てることと同じです。
これをきっかけに、お施主さま方がDIYをはじめとした庭づくり、そこに掛けられた職人技というものに関心を持ち、熱い愛情を受けて完成したお庭を、いつまでも大切に想っていただければ光栄です