近隣トラブルの原因の一つとしてよく挙げられるのが、敷地の境界線トラブルです。
外構デザインや設備を考える際、境界線の知識がないと思わぬトラブルにつながる可能性があります。
あとから「知らなかった」では済まされないケースもあるので、事前に境界線に関する知識を深めておく必要があります。
本記事では、境界線とは何なのか、確認方法やよくあるトラブル、さらにそれらの対策似ついて解説していきます。
目次
1.外構の境界線とは?
外構の境界線とは、自宅の敷地と隣接する土地や道路との間にある境界のことです。境界線は土地の所有範囲を示すもので、フェンスや塀、植栽などを設置する際の基準になります。
反対に、この境界線を明確にしておかないと、近隣とのトラブルや土地の誤った使用などが発生する可能性がるため、特に新築やリフォームをする際には、境界線をしっかり確認することが大切です。
外構の境界線部分には、フェンスやブロック塀などを設置することが多いです。敷地を明確にする以外にも浴室やトイレに面している場合、プライバシーを守る役割、防犯性を高める役割を果たしてくれます。
境界線へのフェンスや外壁の設置にはさまざまな決まりがあり、場合によっては近隣トラブルにつながる可能性もあるので近隣の方とよく話し合って工事を進めることが大切です。
2.境界線のよくある近隣トラブル
敷地の境界線を明確にしておかないと、さまざまな近隣トラブルに巻き込まれる可能性があります。
どのようなトラブルが考えられるか、代表的な事例を紹介していきますので、土地購入や新築住宅を建てる前にはよく確認しておく必要があります。
2-1.境界線の誤認による土地侵害トラブル
境界線に関するトラブルのなかでもとくに多いのが、境界線の誤認による土地の侵害トラブルです。双方が自分の敷地の範囲を誤解していると、自分の敷地なのに隣人が勝手にものを置いた、建築物を建てたなどのトラブルになる可能性があります。
境界線には、筆界と所有権界の二つがあり、筆界には法律で定められたもので、個人間で勝手に変更することはできません。所有権界は双方の合意によって変更できる境界線で、自分の所有権、相手の所有権がある範囲の間にある境界線です。
境界線の誤認は、この筆界と所有権界の認識が間違っていたというケースが多いです。境界線近くにモノを置いたり、建築物を建てる際は、筆界を自分で確認するだけでなく相手にもきちんと確認してもらい、トラブルを防ぐ必要があります。
2-2.建築物による土地侵害トラブル
境界線の土地侵害トラブルのなかでも多いのが、建築物が境界線をまたいでしまったパターンです。建築物といっても住宅のような大きなものではなく、カーポートや物置、ブロック塀、住宅の雨どい、アンテナ、エアコンの室外機などがあります。
雨どいや室外機などは、設置することで隣の土地の住民や植物、ペットなどに悪影響を与えることもあり、重大な訴訟トラブルにつながる可能性も考えられます。自分が知らずに境界線を越えて建造物を設置してしまった場合は速やかに撤去し、トラブルを最小限に抑えましょう。
相手が境界線を越えて建造物を設置してしまった場合は、境界線が明確に判断できる証拠を出したうえで速やかに撤去してもらいましょう。撤去には費用もかかるため、事前に境界線を明確にしたうえで双方で取り決めをしておくことがおすすめです。
2-3.ブロック塀の設置による土地侵害トラブル
自宅の範囲がどこまでかを示すブロック塀ですが、設置されているブロック塀が必ずしも法律で守られている筆界上にあるとは限りません。場合によっては、所有権界上にブロック塀が設置されていることもあります。
所有権界を定めるには、双方の合意が必要です。その合意なしに隣人にブロック塀を建てられた、または自分が合意なしにブロック塀を建ててしまった場合、トラブルに発展する可能性があります。
ブロック塀は一度建ててしまうと撤去にも高額な費用がかかってしまいます。そのため、相手が認めてくれず話し合いが長期化する、訴訟に発展するなどの可能性も考えられます。
また、ブロック塀を解体するには双方の同意が必要なので、相手が境界線を越えて設置しているからといって勝手に撤去はできません。撤去費用もトラブルの原因となるので、相手が応じてくれないなどの理由でも勝手に撤去などの作業は進めないようにする必要があります。
2-4.境界線上の樹木や生垣によるトラブル
外構に樹木や生垣を取り入れている場合、植えた当初は境界線を越えていなかったものの成長するにつれて境界線を越えてしまうというケースもあります。
生垣などは撤去が比較的簡単ですが、大きな樹木となると撤去しにくかったり、費用がかかったりする可能性も考えられます。とくに樹木は、根の部分は境界線を越えなくても枝が境界線を越えてしまうパターンがあります。
大量の落ち葉が隣の家の敷地内に入ってしまったり、実が落ちて臭いや害虫のトラブルの原因になったりすることも考えられます。外構に樹木や生垣を取り入れる際は今だけでなく今後10年、20年と長い目で見て、樹木が育つことも考慮したうえで適切な位置に設置する必要があります。
3.隣地境界線の確認方法
自分の敷地の境界線はどこにあるのか、隣人の建築物が境界線を越えている気がするか確信が持てないという場合には、きちんと境界線を把握したうえで話し合いを行いましょう。
法的に境界線が証明でいれば、話し合いを有利に進められます。境界線を確認する方法を3つ紹介するので、不安な点がある方はまず境界線を明確にしていきましょう。
3-1.境界標(境界杭)を確認する。
多くの場合、土地の境界部分には境界標や境界杭と呼ばれる目印が設置されています。土地の境界部分の隅に設置されており一見すると分かりにくいですが、よく確認すると小さくこの標や杭があることが多いので確認してみてください。
この境界標や境界杭は、法律で定められた境界線に設置されているので、相手が境界線を越えて建造物などを設置している場合の抗議に有効です。
3-2.測量士に依頼する
境界標や境界杭が見つからない場合は、測量士に依頼して境界線を明確にしてもらう方法もあります。
長年持っている土地は、境界線があいまいになっているケースも多く標や杭が見つからない、書類が見つからないというケースも少なくありません。
測量士に依頼すれば正確な境界線を測定してもらえるだけでなく、境界線による近隣トラブルに関する相談をすることも可能です。
明確な境界線を示せず隣人とのトラブルがあいまいなまま長引いているという場合は、自己負担にはなりますが測量士に相談するとよいです。
3-3.法務局で土地の図面を確認する
明確に境界線を判断できる基準がない、測量士に依頼しても判断できなかった場合は、法務局で土地の図面を確認する方法もあります。
法務局には、土地の陶器情報が記載された図面が保管されています。法務局で保管されている図面は法的に確かな境界線が記されているので、判断基準として有効です。
法務局で公図や登記簿を取得する手続きを踏む必要がありますが、トラブルが長期化してる、深刻な状態になっている場合は早めに取得手続きを進めることをおすすめします。
3-4.筆界と所有権界が一致しないこともある
境界線には筆界と所有権界があり、それぞれ必ずしも一致するとは限りません。法的な効力を持っているのは筆界ですが双方の話し合いの結果、定められた所有権が優先されるケースもあります。
その場合は所有権界の取り決めをした書類を確認しなければなりません。また、所有権界を変更したい場合は相手とよく話し合い、トラブルを防ぐ必要があります。なぜ所有権界の変更が必要なのか、相手にデメリットはあるのかなどよく話し合い、今後のトラブルを防ぎましょう
4.境界線トラブルを防ぐための基本対策
①境界線をはっきりさせるための測量と確認:お隣さんとの境界線をはっきりさせるために、プロに頼んで測量を行い、確認しておくと安心です。
②フェンスや塀の設置で境界線をすっきり明示:境界線に沿ってフェンスや塀を設置することで、トラブルを防ぎ、見た目もすっきりさせることができます。
③近隣の方と事前に話し合って合意を得る:お隣さんとは、境界線に関することを事前に話し合い、お互い納得した上で進めることをおすすめします。
④法律の専門家に相談して安心対策:境界線に関して不安があれば、法律の専門家に相談することで安心して進めることができます。
⑤境界線の定期的な確認でトラブルを防止:定期的に境界線をチェックしておくことで、将来のトラブルを未然に防ぐことができます。
5.境界線の近隣トラブルを防ぐおすすめ外構設備
近隣トラブルのなかでも境界線に関するトラブルはとくに多く、自分が注意するだけでなく相手にも慎重に対応してもらう必要があります。
今後の境界線トラブルを防ぐためには、事前に境界線を明確にする外構設備を設置したり、万が一トラブルになった際に証拠として提出できるものを用意しておいたりすることがおすすめです。
外構設備のなかでも境界線トラブルを防ぐのに役立つアイテムを紹介します。
5-1.ブロック塀
ブロック塀は、境界線を明確にするうえでおすすめです。ただしブロック塀は幅があるので、その内側までが自分の敷地なのか、外側まで自分の敷地としていいのかは明確にしておく必要があります。
双方の話し合いにより、ブロック塀の設置費用を出したほうが外側までの権利を所有するなど取り決めておくと安心です。
ブロック塀は倒壊などの危険性もあるため、万が一劣化や災害などで倒壊した場合はどちらが修理費用を負担するのか、住人がけがをした場合の責任はどちらがとるのかなども決めておきましょう。
5-2.フェンス
境界線を明確にする外構設備のなかでもフェンスは、ブロック塀と比べて幅が狭いので限られた敷地を最大限まで有効活用できます。
設置費用もブロック塀と比べると安く抑えられる可能性が高く、倒壊などの危険性も最小限に抑えられます。
また、ブロック塀は外部からの目隠しなどの役割を果たしますが、住宅が隣り合っていて壁が近い場所には目隠しは不要です。
壁しかない部分はフェンスに、プライバシーを守りたい部分はブロック塀になど、使い分けることで費用を抑えつつ適切な対処ができます。
5-3.照明
境界線近くに照明を設置することで、境界杭や境界標の代わりとすることも可能です。境界杭や境界標が見当たらない場合は、照明を設置することも検討しましょう。
照明であれば塀やフェンスのように閉塞感を与える心配がなく、設置費用も大幅に抑えられます。夜間でも明るい外構は防犯性も高まるので、境界線を明確にする以上のはたらきを見せてくれます。
夜でも境界線を明確にでき、隣人が夜間にわざと樹木や植栽を設置するなどのトラブルを回避することも可能です。
6.ブロック塀を設置する前に知っておきたい3つの積み方
ブロック塀を境界線に設置する前に、積み方の基礎知識を理解しておきましょう。
境界線上にブロック塀を設置したと思っていても、場合によっては隣人から苦情が入る可能性があります。
どのような積み方をするかを取り決め、隣人間でトラブルの内容に作業を進めていくことが大切です。
6-1.芯積み
芯積みは、境界線を中心としてブロック塀を積む方法です。ブロック塀の幅が20センチの場合、境界線を中心として双方の敷地に10センチずつ入り込むことになります。
双方にとって公平な積み方ですが、話し合いをせずに作業を進めると「聞いていない」「勝手に侵入してきた」と苦情が入る可能性があるので事前にお互いの敷地にどれだけ侵入するのかを明確にしておきましょう。
6-2.内積み
内積みは、境界線より内側にブロック塀を積む方法です。自分の敷地内で完結するので、隣人の敷地に干渉する心配がありません。
ただし、法的な境界線の内側であっても所有権界が違う可能性があるので、いずれにしても一度確認を取っておくと安心です。
6-3.外積み
外積みは、隣人の敷地にブロック塀を積む方法です。ブロック塀自体が隣人の所有物となり、費用も隣人が出すケースが多いです。
ただし、場合によっては費用を折半したり、こちらが持つこともあります。
隣人の許可がなければ設置できないので、トラブルになる前にブロック塀の設置について話し合って取り決めを明確にしておきましょう。
まとめ.
近隣トラブルのなかでも身近に起こりやすい境界線のトラブル、確認方法、おすすめの外構設備について解説しました。
境界線は法律で定められているものを基準とすることが多いですが、なかには隣人間で取り決めた境界線を基準としていることもあります。
これから土地を購入する場合や、親族が所有していた土地を譲り受ける際などは、事前に境界線を明確にしておくことが大切です。
本記事で紹介した確認方法や外構設備もふまえて、適切な対応をしてトラブルを防ぎましょう。
筆者:外構工事職人歴20年 石川公宣