外構の種類は、大きく分けて3種類存在します。
オープン外構やクローズド外構、さらにはセミクローズ外構です。中でも、「庭を豊かにデザインしたい」と思うのであれば、その第一歩は「エクステリアを開放的にする」ことから始まります。
しかし、従来の純和風住宅の外構を想像すると、塀や生垣(いけがき:植栽で造る垣根)、あるいは門扉などで囲っている家が大半です。
これは、武家屋敷のステータスシンボルとして「立派な門・塀のイメージが受け継がれてきた」という歴史的な理由があるからです。
それだけではなく、防犯上、侵入防止のための塀やフェンスを人々が求めたのが主な原因とされています。
しかし、近年では敷地が細分化し、土地が狭くなっていく流れのなかで、従来の塀やフェンスは本来の役目を果たさなくなっているのは事実です。
建物と境界線の間にほとんど役に立たない隙間を生み出すのみだからです。
もはや、形骸化(けいがいか:本来の目的を失い、形ばかりになること)したものといえます。
そもそも、建物全体の囲いを作るためには多額の費用が必要になります。高額なお金をつぎ込んで、使用できる敷地を狭くしては意味がありません。
一方、オープン外構であれば、都心部のように住宅が密集した地域に適しています。境界を曖昧にすることで、小さな土地に開放感を与えることが可能です。
曖昧な境界をデザインするオープン外構
オープン外構の魅力は、あなたの家を街の景観の一部にすることにあります。
このこともあり、分譲地(大きな庭を小分けにして販売している土地)などに並ぶ住宅は、一貫してオープン外構を採用していることが多いです。
これは、それぞれの住宅のエクステリアを、街の景観の一部として考えていることがあります。
境界線上にフェンスなどの構造物を立てて道路と敷地を分断するのではなく、道路と敷地の一部を一体化させ、それを一つの領域としてデザインします。
そこには、「道路と外構を合わせて一つの庭を作り、道行く人と居住者が、その領域を共有していく」という意識が働いています。
敷地を完全に仕切らないことで、広がりのある庭を造ることができます。
例えば、塀やフェンスの代わりに植栽を植えるだけでも、オープン外構につながります。
これは、敷地が狭く、境界線と建物が接近している場合は特に有効です。
ただ、境界線上に門・フェンスなどの構造物を立てなければ、場合によっては土地の権利関係があいまいになる恐れがあります。
この場合、境界杭(土地の境界を示す杭)や短い塀を境界線上にポイントとなるように設け、仮想的なラインを描けていれば問題ありません。
ただし、オープン外構を豊かにデザインするにはスペースを活用しなければいけません。
そこで、オープン外構を有効に利用する方法を紹介します。
オープン外構を有効利用するには
例えば、塀を立てずに、道路に対して庭をオープンにするとします。
この場合、あえて曲がりくねったアプローチ(敷地の入り口から玄関までの路)を組むことも良いです。
次に、これをどのように発展させ、敷地の入り口から玄関までを繋げるのかを考えます。例えば、以下のようなものになります。
・植栽を眺めながら木々の下をくぐる
・視線の先に飾られた花が見え隠れするように配置する
具体的に考えていくと、どのようなデザインが良いかが見えてきます。
ただ、オープン外構では、プライバシーや防犯性の問題があります。しかし、きちんとした対策をしておけば、これらの悩みは簡単に解決します。
・植栽を利用して立ち入れる範囲を限定する
・部分的に門扉や塀を設ける
・道路と敷地に段差をつけ、立ち入りづらくする
これらの手法を一つだけ採用するのではなく、いくつかを組み合わせるようにしましょう。
こうした演出をすることで、プライバシーや防犯性を確保していきます。
まとめ
オープン外構には、メリットとデメリットの両方が存在します。
しかし、きちんと考えてプランニングすることで、デメリットは極限まで小さくなります。
もし、敷地が狭かったりエクステリア工事を行う予算が少なかったりする場合は、空間を最大限に活かすことができて工事費用の安いオープン外構を採用しましょう。
筆者:外構職人歴20年・石川公宣