庭やグラウンドに芝を設置したいと考えている人は、天然芝と人工芝のどっちを選ぶのが良いのかについて迷うこともあるのではないでしょうか。
この記事では、天然芝と人工芝のコストや用途といった基本情報から、それぞれのメリットとデメリットや違い、選び方について詳しく解説します。芝の設置業者の選び方についても紹介するので、ぜひ参考にして下さい。
目次
1.天然芝と人工芝の基本情報
まず、 天然芝と人工芝の特徴やメリット、デメリットなど基本情報について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
- 天然芝の特徴
- 人工芝の特徴
1-1.天然芝の特徴
天然芝は芝草が密集して生えたもので、主に「日本芝」と「西洋芝」の2種類があります。自然な風合いや草の香り、季節ごとの変化などが天然芝の魅力です。また、植物の持つ機能としてCO2吸収やヒートアイランド現象の緩和を助ける点も評価されています。
芝草の茎や葉は丈夫なため、踏んでも折れたりつぶれたりすることはありません。ただし、天然芝は日当たりの良さや水、栄養分など生育環境が整っていないとうまく育たないことがあります。また、天然芝をきれいな状態を保つためには定期的な芝刈りが必要です。
1-1-1.天然芝のメリット
天然芝は生きた植物なので、季節や天候の移り変わりによって見た目が変化していく様子を楽しめます。また、さまざまな長さや太さ、色の葉が集まっていることによって自然な景観をつくり出すところも魅力です、加えて、水分を含むため夏も表面温度があまり上がらず、燃えにくいので芝生の上でバーベキューなども楽しめます。
加えて、天然芝は本体価格が安いため、人工芝よりも初期費用を抑えられる点もメリットです。
1-1-2.天然芝のデメリット
天然芝は生きた植物のため、水と日光を得られる環境が必要です。また、天然芝は成長し続けるため、定期的に芝刈りをしないと見た目が悪くなり、枯れや変色などのトラブルにもつながります。目安として、夏場の水やりは毎日必要で、春や秋、冬でも毎月のお手入れが望ましいです。
水や肥料を与えたり芝刈りをしたりするのは手間がかかるだけでなく、費用もかかります。芝刈り機は安い物でも1万~2万円、肥料や除草剤にも年間で1万円ほど必要です。さらに、天然芝を元気にするために行う土壌のエアレーションに使う工具にも約1万円かかります。
1-2.人工芝の特徴
人工芝はターフとも呼ばれ、天然芝を模して人工的につくられたフェイクグリーンです。人工芝の素材にはポリエチレンやポリプロピレン、ナイロンなどの合成樹脂が使われています。そのため燃えやすく、設置後は火気に注意しながら使用する必要があります。
人工芝は設置場所を選ばないため水や日光のない室内でも設置できますし、季節を問わず一定の見た目を保つことができます。メンテナンスの手間や費用もほとんどかかりません。
1-2-1.人工芝のメリット
人工芝のメリットは、設置場所を選ばず、手間をかけなくてもきれいな状態を長く保てることです。一般的に10年程度は使えると言われています。
人工芝は汚れた時に簡単な掃除をする程度でよく、特別なメンテナンスを定期的に行う必要はありません。そのため、ランニングコストもほとんどかからない点がメリットです。また、天然芝のように冬に枯れることもなく一年中グリーンなので、設置場所が明るいイメージになります。
1-2-2.人工芝のデメリット
人工芝の見た目は天然芝をかなり再現していますが、手触りなどの質感は天然芝におよびません。また、長く使っているうちに芝が倒れてフカフカの形状が失われていくので、10年程度で交換が必要です。
加えて、人工樹脂でできているため熱に弱く、夏の屋外で使用すると表面がかなり熱くなってしまう場合があります。火に近づけると溶けたり燃え広がったりするため、バーベキューや花火などアウトドアのレジャーを楽しみたい場所には向きません。
また、天然芝より初期費用が高くなりやすい点も人工芝のデメリットです。
2.天然芝と人工芝を比較!主な違い4つ

天然芝と人工芝の主な違いとして、次の4つが挙げられます。
- 費用
- メンテナンス
- 設置できる場所・用途
- 耐久性・寿命
それぞれについて以下で詳しく解説します。
2-1.費用
天然芝の本体価格は1平米につき約500~1000円と安いため、設置費用を含めても初期費用を押さえることができます。ただし、肥料代や除草剤代、水道代、芝刈り機やエアレーション工具の購入など、ランニングコストがかかります。
一方、人工芝は本体価格が高めで、安い製品でも1平米につき約1,000~2,000円、高級品だと1万円前後です。そのため初期費用が高くなりますが、設置後のメンテナンス費用はほぼかかりません。
2-2.メンテナンス
天然芝は生きた植物のため、手入れに手間がかかります。夏は毎日の水やりが必要なことに加えて、定期的な芝刈りや除草作業、施肥も行わなければなりません。さらに、天然芝を活性化するためには土壌の空気循環(エアレーション)もするのがベストです。
一方、家庭用の人工芝はほとんどメンテナンスの必要がなく、ゴミやホコリを掃除機で吸ったり、デッキブラシで葉を立たせたりする程度です。スポーツ用の場合は砂やゴムチップの充填(じゅうてん)や専用の機械でブラッシングを行います。
2-3.設置できる場所・用途
天然芝の設置には日当たりが良く水やりができる場所が必要です。天然芝の主な用途は、家庭の庭やスポーツフィールドなどが挙げられます。
一方、人工芝は設置環境を選ばず設置が可能です。日が当たらない場所や土のない場所、水はけのない場所でも、人工芝なら問題なく設置できます。そのため、人工芝はベランダやドッグラン、屋上庭園など、幅広い用途に利用することができます。
2-4.耐久性・寿命
天然芝は植物のため環境の影響を受けやすく、適切なメンテナンスを怠ると枯れたり変色したり虫が湧いたりすることがあります。しかし、きちんと手入れをしていれば長持ちさせることが可能で、数十年、きれいな状態を維持することも可能です。
一方、人工芝は耐久性が高いものの、経年劣化します。人工芝の寿命は使用環境によりますが、一般的に10年程度です。ただし、品質の低い製品の場合は2年程度で劣化することもあれば、高品質の製品の場合は20年持つものもあります。
3.天然芝か人工芝かを選ぶポイント3つ
天然芝にするか人工芝にするかを選ぶ主なポイントは「メンテナンス」「費用」「設置場所の環境」の3つです。
時間と費用のかかるメンテナンスを長期間にわたって継続できるなら天然芝でも良いですが、それが難しい場合は人工芝を選ぶ方が良いでしょう。
費用については、初期費用とランニングコストのバランスを考慮して選んで下さい。芝の販売店や設置業者に長期的なシミュレーションを作成してもらうと良いでしょう。
設置場所の環境については、日当たりや水はけの良い場所なら天然芝を選べますが、良くない場所なら人工芝を選んで下さい。
4.利用シーン別のおすすめ選択

芝の主な利用シーンとしては、次の4つが挙げられます。
- 子どもがいる家庭の場合
- 野球場として使用する場合
- サッカー場として使用する場合
- ゴルフ練習場として使用する場合
それぞれのシーンに合う芝について、以下で詳しく解説します。
4-1.子どもがいる家庭の場合
子どもがいる家庭に芝を設置する場合は、安全性と手入れのしやすさを考慮して選ぶのがおすすめです。
人工芝はパイルの固さや長さを選べるので、柔らかくクッション性の高いパイルの製品を選ぶと良いでしょう。詰め物の入った高品質の人工芝もあり、転んだ場合でもけがのリスクが小さくなります。また、人工芝なら除草剤も不要で花粉も出ないため、化学物質過敏症やアレルギーのある子どもにも安心です。
また、小さい子どもがいる親は多忙なため、メンテナンスの手間がかからない面でも人工芝が良いでしょう。加えて、人工芝ならはだしで遊んでも足が汚れません。
4-2.野球場として使用する場合
野球場として使用する場合は、天然芝の方が体への負担がかからないと言われています。人工芝は下にコンクリートなどを敷くことが多いため、激しい動きをした時の衝撃が体に直接伝わりやすく、天然芝より痛みを感じます。また、摩擦熱が起こりやすいのも人工芝のデメリットなので、スライディングなどをすると皮膚を傷めてしまうおそれがあります。
野球場に人工芝を設置する場合は上記を考慮し、クッション性の高い高品質な製品を選ぶようにしましょう。パイルが長く密集しているものがおすすめです。
4-3.サッカー場として使用する場合
人工芝は雨や雪などの影響を受けにくく天然芝より安いため、サッカー場でも活用されています。ラインを描けるためプレーしやすい、グリップが効くのでパスしやすいこともサッカー場に人工芝を使用するメリットです。ただし、摩擦熱が生じやすいため、やけどをするリスクがあります。また、充填(じゅうてん)剤が入っていない家庭用の人工芝でなく、スポーツ用の人工芝を選ぶことも大切です。
天然芝をサッカー場に使用するメリットは、水をまくとボールがよく走ることやスライディングしやすいことです。ただし、雨が降ると水たまりやぬかるみができることは天然芝のデメリットと言えます。
4-4.ゴルフ場として使用する場合
ゴルフ場は天然芝が一般的ですが、ゴルフ練習場には主に人工芝が使われています。
人工芝はクラブのヘッドが滑りやすいため、ミスショットをしても勝手にヘッドが滑ってボールに当たり、ナイスショットになりやすい点がメリットです。その反面、本当に実力でナイスショットを打てているのか分かりにくいというデメリットも存在します。
天然芝は芝の下が柔らかい土のため、ミスショット時に手首への負担を軽減できます。また、ミスショットするとボールがうまく飛ばず、実力を判断しやすいこともメリットです。
5.芝の設置費用を抑える3つの方法
芝の設置費用を抑える主な方法として、次の3つがあります。
- DIYでの設置に挑戦する
- 芝生の種類や張り方を考慮する
- 業者の選定と相見積もりを活用する
それぞれについて、以下で詳しく解説します。
5-1.DIYでの設置に挑戦する
設置場所の面積がそれほど大きくない場合は、設置業者に依頼せずに自分で芝生を設置することによって施工費用を削減できます。設置の手順は次の通りです。
まず、設置に必要な材料と道具を準備します。人工芝の場合は芝本体と防草シート、天然芝の場合は芝本体と下地用の砂堆肥、肥料などが必要です。また、天然芝を張る密度の違いによって本体にかかる費用が異なります。
必要なものが揃ったら、設置場所を整地してから芝を敷き、仕上げます。
5-2.芝生の種類や張り方を考慮する
天然芝は高麗芝や野芝、ティフトン芝などの種類があり、価格や見た目、耐久性などはそれぞれ異なるため、比較して選びましょう。
天然芝の張り方は密度の違いによって異なります。一般的な張り方である「平張り」は芝を隙間なく敷くため、使用量が最も多く費用もかかります。コストダウンしたい場合は、間隔を空けて敷いていく目地張りや市松張りを検討してみて下さい。
人工芝にも多くの製品があり、品質や価格もさまざまです。用途に合った製品を比較し、リーズナブルなものを選ぶと良いでしょう。
5-3.業者の選定と相見積もりを活用する
芝の設置を業者に依頼する場合は、複数の業者から見積もりを取りましょう。見積もり内容や価格、対応などを比較検討することで相場が分かり、最適な価格とサービスを提供してくれる業者を選ぶことができます。
比較する際は価格だけでなく、芝設置の実績や評判、アフターサービスなども考慮することが大切です。業者のホームページや口コミサイトなどをチェックしてみて下さい。
6.芝の設置業者を選ぶ際のチェックポイント
芝の設置業者を選ぶ際の主なチェックポイントとして、次の3つが挙げられます。
- 実績の確認
- 価格の透明性
- アフターサービス
それぞれについて、以下で詳しく見ていきましょう。
6-1.実績の確認
芝設置の依頼を検討している業者のホームページで、過去の施工事例をチェックしましょう。エクステリア施工業者にはそれぞれ得意分野があります。芝設置の専門的な知識や経験、技術を持つ業者かどうかを見極める際に、施工実績が参考になります。ホームページを見ても十分な情報が得られない場合は、電話や対面で問い合わせてみて下さい。
また、口コミサイトやGoogleマップのレビューなどで利用者の評価をチェックすることも大切です。
6-2.価格の透明性
見積もりを出してもらったら、作業内容や必要な材料などが明確に記載されているかをチェックします。その際は、費用の内訳がきちんと記載されていると安心です。「〇〇一式」など内容が分かりにくいものがあれば質問し、あいまいな点を残さないようにしましょう。そういった場合に誠実に回答してくれるか、コミュニケーションが取りやすいかの確認も、信頼できる業者選びにおいて大切なポイントです。
また、見積書に記載されていない追加費用が発生する可能性はあるか、いくらくらいかかりそうかについても、事前に確認しておきましょう。
6-3.アフターサービス
施工後に不具合が発生する場合もあるため、アフターサービスの有無や保証期間や保証内容についても見積もりの時点でチェックしておいて下さい。
例えば、人工芝の設置後、すぐに破れてしまったりしわが出てしまったりする場合もありますし、想定外の悪天候によって芝が浮いてしまう場合もあります。保証対象にならないケースについてもしっかりと確認しておくようにしましょう。
まとめ.

天然芝は初期費用が安く済むもののメンテナンスに手間と費用がかかります。一方、人工芝は初期費用が比較的高くなるものの、メンテナンスはほとんど不要です。
また、設置できる場所や見た目、質感、体への負担、火気への注意なども天然芝と人工芝では異なります。設置場所や用途を考慮して、自宅に合った芝を選びましょう。
選び方に迷ったら、芝の設置実績がある業者に相談するのもおすすめです。複数の業者に見積もりを取り、良心的な業者を選んで下さい。
筆者:外構工事職人歴20年・石川公宣