マイホームを建てる際、よく「外構工事」という言葉を見聞きすることがあります。
住宅に手を加えることは何となくわかるものの、具体的にどのような工事で費用がいくらかかるのか、詳しく知らないという人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、外構工事の基礎知識をはじめ、その種類や費用相場まで幅広く解説していきます。
マイホームの建築やリフォームを検討している場合は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.外構工事とは
外構工事とは、住宅の外側にあるさまざまな構造物に対する工事のことです。
たとえば、敷地の入り口にあたる門扉や門灯をはじめ、敷地を囲うブロック塀やフェンス、駐車場やガレージなどが該当します。
このほか、玄関前のアプローチや庭、ウッドデッキなども外構工事のひとつです。
舗装工事や排水工事、造園植栽工事などもすべて外構工事に含まれるので、建物本体以外にかかる工事はすべて外構工事だと考えておくと良いでしょう。
外構工事は住宅を建てる工程の最後に行われる仕上げの作業であり、設計を誤ればイメージ通りの住宅にならない可能性もあるため非常に重要なポイントです。
また、フェンスや塀などを設置することで、外部から敷地や住宅の中が見えにくくなったり侵入しづらくなったりする効果もあり、プライバシー確保やセキュリティ強化の面でも大きな役割を果たします。
住宅を建てる際はどうしても内装や間取りなど内側に意識を向けがちですが、これらの外構工事なくして安全かつ理想的な住宅は完成しないのです。
2.外構工事は本体工事に含まれない!
外構工事は住宅を建てるために欠かせないものなので、すべての工事がセットで行われるイメージがありますよね。
ところが、実際に注文住宅を建てる場合、外構工事が本体工事に含まれていないケースが多いため注意が必要です。
マンションや建売住宅であれば、土地と建物がセットになった完成形の状態で販売されています。
門柱や駐車場など、必要なものがある程度整った状態で購入できるため、外構工事について考える必要はほとんどありません。
しかし、注文住宅では土地探しから建物の設計・建築にいたるまで、すべてを自分たちでゼロから作りあげることになります。
もちろん外構も希望に沿って決めていくため、建物とは別に工事を考えなければなりません。
住宅を建てるハウスメーカーが外構工事までまとめて請け負ってくれるケースもありますが、それ以外に外構や造園などを専門に手掛ける業者を探して依頼する方法もあります。
いずれの場合も、外構は住宅本体の工事とは別に作ることになるため、見積もりも別途必要になることが多いのです。
これを知らず、外構工事も本体工事の価格に含まれていると思い込んでいると、思わぬ出費が必要になり焦ることにもなりかねません。
そうならないためにも、外構工事にかかる費用を正しく把握しておくことが大切です。
外構工事は、だいたい建物の10%程度の費用がかかるとされています。
2000万円の住宅であれば、外構工事費用として約200万円必要になる計算です。
建物の本体工事とは別にこれほどのお金が必要になるのは大変ですが、事前にわかっていれば本体工事の費用を含め、無理のない資金計画を立てることができます。
どうしても外構工事の資金が足りない場合は、住宅ローンへの組み込みなども検討しましょう。
住宅を建てるハウスメーカーなどに外構工事まで一括で依頼すると、その費用も住宅ローンに組み込めることがあります。
住宅ローンは比較的金利が低いので、一般的な信販ローンなどを利用するよりもコストを抑えられるでしょう。
ほかにも、複数の外構工事専門業者から相見積もりをとって割安なところを探す、優先度の低い工事は資金に余裕ができてから発注するなど、費用を抑える方法はいくつかあります。
DIYが得意なら自分たちで作ってしまうという選択肢もあるので、色々と工夫してみましょう。
3.エクステリア工事との違いは?
外構工事と誤解されやすい言葉に、「エクステリア工事」があります。
エクステリアとは、住宅の外側に関する空間のことです。
家具や内装など、室内空間にあるものを全般的にインテリアと呼びますよね。
エクステリアはその対義語であり、門扉やフェンス、庭などを含めた住宅の外部を構成する空間をまとめて呼んだものです。
一方の外構は、門扉やフェンスなど、構造物そのものを示しています。
つまり、いくつもの外構が集まり、そこに植栽や看板など装飾的に設置されたものが合わさってエクステリアを構成しているのです。
従来の呼び方である「外構工事」が用いられるときは構造物そのものへの工事、「エクステリア工事」が用いられるときは外構を含めた空間デザインを指すと覚えておきましょう。
外構工事もエクステリア工事も、住宅の外にある構造物やそれを含む空間への工事であり、意味はほとんど変わりません。
同じ意味合いで使われることも多いですが、エクステリア工事がデザイン性や装飾性を重視した演出的な工事であるのに対し、外構工事は機能性を重視した工事になるケースが一般的です。
4.外構工事の種類
外構工事の種類は、設置する構造物により「クローズ外構」「オープン外構」「セミクローズ外構」の3つに分けられます。
それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なるので、事前に押さえておきましょう。
4-1.クローズ外構
クローズ外構は、住宅にそって敷地の外周に塀やフェンスを設置するスタイルです。
ある程度の高さの塀・フェンスで住宅をぐるっと囲んでしまうため、敷地の内側と外側をはっきりと区切ることができます。
日本では古くから用いられている代表的なスタイルで、外から敷地内の様子が見えにくいのでプライバシーを確保しやすいです。
また、塀やフェンスのおかげで子どもやペットが道路に飛び出したり、不審者が敷地に侵入したりすることを防ぎやすいというメリットもあります。
塀・フェンスの素材やデザインを高級感のあるものにすると、重厚でオーセンティックな雰囲気の住宅を演出できるでしょう。
その一方で、視線を遮るクローズ外構は閉塞感や圧迫感を抱きやすいため注意が必要です。
圧迫感を軽減するためにも、建物から敷地外まで十分なスペースがある住宅におすすめです。
なお、外部から敷地内が見えにくいことで死角ができ、不審者の隠れ場所になるなど逆効果になる可能性もあります。
このため、塀やフェンスの高さをほどほどにしたり、センサー付きライトを設置したりして防犯対策にも気を配ると良いでしょう。
4-2.オープン外構
オープン外構は、建物の周りにできるだけ塀やフェンスを設置しないスタイルです。
設置したとしても、低いタイプや目隠しの機能があまりないタイプが多いです。
門柱はあっても門扉はないなど外構を少なくすることで、開かれた空間を作り出します。
これは欧米の住宅に多く見られるスタイルで、住んでいる人は開放的な雰囲気を味わえるため敷地が狭い住宅におすすめです。
遮蔽物がないことで周囲の景観になじんだ明るい雰囲気を演出しやすいだけでなく、設置する構造物が少ないので費用や工期を抑えやすいというメリットもあります。
ただし、住宅の前を行き来する人や車から家の中が見えやすくなる点には注意が必要です。
プライバシーを確保するために、設計時に窓の位置を工夫したり、窓に目隠し用のフィルムを貼ったりすると良いでしょう。
敷地に不審者などが侵入しやすいので、防犯対策も念入りに考えなければなりません。
4-3.セミクローズ外構
セミクローズ外構は、クローズ外構とオープン外構の中間に位置するスタイルです。
クローズ外構とオープン外構の良さを併せ持っており、プライバシーの確保と適度な開放感の両立を実現できます。
具体的には、敷地境界線の一部分にだけ塀やフェンスを設置したり、高さを抑えたりすることで、適度に開放的な空間を作り出します。
ほかにも、住宅の周囲には何も設置せず、子どもの遊び場や洗濯物を干す場所だけ目隠しのフェンスを設置するなど、必要に応じて柔軟なデザインも可能です。
この場合、必要な場所にだけ費用をかければ良いため、完全なクローズ外構と比べてトータルコストの節約にも役立ちます。
ただし、クローズとオープンが混在することで、外構の機能やデザインが中途半端になってしまう場合もあるので注意しましょう。
視線を遮りたい場所と開放感を味わいたい場所を事前にハッキリさせ、全体像を見ながら設計していくのがポイントです。
5.外構工事の費用の相場
外構工事とひと口にいっても、設置する構造物によってその費用は大きく変わります。
外構工事は住宅の本体工事とは別に考える必要があるため、事前に費用相場を知っておくことは欠かせません。
各構造物の費用相場を紹介するので、どこにいくらくらい必要になるのか確認しておきましょう。
5-1.フェンス
外構の代表的な構造物といえば、やはりフェンスは外せません。
隣家や道路との境界をはっきり示すものであり、目隠しや防犯対策としても役立つので設置したい人も多いでしょう。
木材やアルミ、樹脂などさまざまな素材があり、どれをどの程度使用するかによって費用は変わります。
一般的には、材料・工事費込みで幅2メートルにつき5万円前後が相場です。
敷地境界線の長さなど、設置したい距離に応じて計算してみましょう。
たとえば、20メートルにわたってフェンスを設置するなら50万円、30メートルなら75万円ほどが目安です。
住宅の周りをぐるっと囲うクローズ外構の場合、塀やフェンスはかなりの距離が必要になるので、自然と費用も高くなるでしょう。
構造計算や基礎工事が必要なコンクリートのブロック塀にすると費用がさらに高くなるので、少しでも節約したい場合はフェンスがおすすめです。
遮蔽性はコンクリートに負けるものの、フェンスは素材もデザインも豊富な種類があるので、見た目にこだわりたい人はきっと満足できるでしょう。
費用をかけたくない場合は、フェンスがあまり必要ないオープン外構やセミクローズ外構を選ぶという方法もあります。
5-2.駐車場
マイカーを持っている場合や来客が多い場合などは、駐車場も必要です。
ガレージや縁石を設置したり、台数分にスペースを区切ったりするなどさまざまな工事があり、どのように駐車スペースを整えるかによって費用も変わります。
とりあえずは、タイヤに負担がかからないようコンクリートやアスファルトで整備するケースが多いでしょう。
1平方メートルにつき、コンクリート敷きであれば1万円前後、アスファルトなら5000円前後が相場です。
軽自動車なら1台に必要な駐車スペースが約8平方メートルなので、コンクリート敷きは8万円、アスファルトは4万円ほどかかります。
大型車は1台につき約15平方メートル必要なので、コンクリート敷きで15万円、アスファルトで7万5000円を目安にしましょう。
ただし、これはあくまでも車1台を駐車するために最低限必要な広さです。
余裕を持って乗り降りしたい場合や複数台駐車する場合はさらに広さが必要になるので、その分費用も高くなります。
また、駐車場には雨や雪から愛車を守るためのカーポートを設置したいという人も多いでしょう。
カーポートは車1台分の大きさで15万円ほど、2台分で30万円~、3台分では50万円~が相場となります。
このほかにも、枕木の設置や砂利の敷き詰めなど、費用に大きな差が出やすいポイントもあるので注意しましょう。
5-3.門扉・門柱
門扉や門柱、それに付随する門塀やポスト、表札などはひとつの構造物ともいえるので、まとめて工事を済ませる人がほとんどです。
一般的な広さの住宅であれば、シンプルな門扉と門柱、インターホンの組み合わせで30万円ほどが相場になります。
ただ、門扉や門柱は外構の中でももっとも目につきやすく、マイホームの顔ともいえる大切な場所です。
住宅のイメージを左右することもあるため、素材やデザインに徹底的にこだわる人も珍しくありません。
単純な構造ではなく植栽などの装飾をプラスしたり、素材やデザインのグレードを上げたりしていくと、それに従い価格も高くなります。
ほかの外構工事を決めた後で門扉・門柱に取り掛かると、予算オーバーになってしまう可能性もあるので注意が必要です。
門扉・門柱にこだわりたい場合は、ほかの外構工事を控えめにするなど全体の予算のバランスを考えて決めるようにしましょう。
まとめ
外構工事は建物の本体工事とは別に必要となり、ある程度まとまった費用がかかるため計画的な資金の準備が欠かせません。
ハウスメーカーや工務店を通すと、手間がかからず楽ではありますが割高になることも多いです。
正しい知識や豊かな経験をもとに、お客様の立場になって熱心に取り組んでくれる施工業者に依頼できるよう、この記事で紹介したことを参考にしてみてください。